富山県では、1月になれば登山道のない低山に登ることができるようになります。こういった山は、無積雪時は藪で覆われるため、容易にアクセスできません。積雪時であれば、藪が雪で押しつぶされ、スノーシュー等を装着して登ることができるのです。
ところが、今シーズンは全国的に暖冬。こちらでも雪がありません。ということで、今回は登山道のある低山に登ることにしました。しかし、今年は低山でも標高1000mないと雪がない状態です。冬期は登山道に通じる林道等が、ゲートで閉鎖してあることが多いです。また、ゲートがないにしても林業者が冬の間は作業をしないため、林道のメンテナンスをしません。なので、道が崩壊したままになっていることが多々あります。そういったことを踏まえ、なるべく主要幹線道路近くか、人が住んでいる集落(除雪がしてあるので)近くに登山口がある山を選びます。
大地山(おおちやま)に登ろう
今回は呉東(富山県東部)下新川郡朝日町にある「大地山」(おおちやま)に登りました。はじめて登る山ですが、分県登山ガイドにデータがバッチリあります。無積雪時での登山道の様子やコースタイム等を予習しておきました。
積雪時のコースタイムは私の場合、標準時間+2時間で考えています。余談ですが、登山道のない山に登る時は、カシミール3D等で予想コースを作成し、KMZファイルに出力してグーグルアースなどで表示させ、イメージしておきます。また、出力ファイルをスマホにエクスポートし、登山時はGPSアプリで確認しながら登っています。
当日は、晴れ。登山口付近も雪がありません。でも、登山道の取り付きには、いきなりロープが垂らしてありゲンナリします。ほぼ垂直な壁です。想定内とはいえ、萎えます。イヤことはサッサと忘れるため、猿のようにスルスル登って通過します。しかし、執拗に急勾配は続きます。塩飴などなめてカロリー摂取し、気を取り直します。そして、3回ぐらい天を仰ぎ、頭を抱え絶望したあたりでようやく標高638mの台地に到着します。
ここからスノーシューを装着します。カンジキも持っているのですが、今回はスノーシューです。急勾配ならカンジキを履きます。斜面の勾配で使いわけます。私の持っているカンジキは、つま先部分が可動するので、先端の尖った金具でキックステップで登れます。なので、急な斜面でも直登できます。
スノーシューは、サイズが少し大きいのと、固定金具まわりに膜があるので、雪が深い時はこちらのほうが踏み抜きは少ないです。ただ、大きくて取り回しが悪いのと、つま先が固定されているので、急斜面には向いていません。
ここから標高796mの鍋倉山まで、勾配が少なく快適な雪原ハイクとなります。鍋倉山からは、すばらしい眺望が得られました。ぐるり僧ヶ岳から剱岳、白馬岳から朝日岳まで。朝日の中で輝いていました。
以降、本格的な積雪になりましたが、これらの山々から力をもらいました。まだまだ頂上まで距離がありますが、ガッツで登れます。しかし、もう急勾配も背筋が凍るヤセ尾根もないので、心穏やかに登れます。山頂の手前、標高990m付近で心許ないくらい尖ったピークをすぎれば、最後の登りです。さぁ、感動する準備をして雪煙をあげながら駆け上りましょう。
頂上は、あっけないぐらい平らです。特に○○山という標識もありません。歩き回って写真を撮れる場所を探しますが、眺望はよくないです。絶妙に木の枝とかで遮られます。しかし、手の届くところに初雪山、犬ヶ山、白鳥山がみえます。朝日岳方面はガスってきて、今にも空の白濁に溶け込みそうです。
天気が下り坂のようです。荒れないうちに頂上でお昼ご飯を済ませます。登っている間は、機関車トーマスのように頭から湯気がわきたって発汗するのですが、ジッとしていると凍える寒さです。
冬山登山のウエアはレイヤリングで!
100m標高が上がると0.6度、気温が下がるというので、軽く氷点下でしょう。冬山というと、ついつい保温を考えてダウンやヒートテックを着込みがちです。しかし、汗冷えが最も体温を奪います。私は、汗かきなので吸水拡散性の高い化繊のアンダーウエアを半袖と長袖で重ね着します。その上にフリース。風がないならこれだけです。風があれば、その上にソフトシェル。雪や暴風になれば、シンサレート入りのゴアテックス・ハードシェルを羽織ります。保温の基本はレイヤリングです。
下山中に先ほどの標高990m小ピークで息をのみます。高曇りではありますが、親不知から能登半島までの日本海。そして、霞がかかった富山平野の向こうに、ぽっかりと白山が浮かんでいます。山登りの一日で、一度は「ハッ!」とさせられる瞬間があるものです。自分の魂が山と邂逅する瞬間でもあります。
下りは、自分のトレースをたどるだけなので楽です。踏みながら「登りのオレ凄いなー」などと自己肯定感を上げて下ると気分がいいです。
鍋倉山直下までもどるとスノーシューを外し、ザックにくくりつけます。以降、ふかふかの落ち葉の急坂になるのでスリップに気をつけます。赤松の林をぬけると、真下に自分のクルマがみえます。さすがにホットします。
下山後は温泉を楽しもう!
帰りは温泉に浸かることにしています。ここからだと、「宇奈月温泉」、「バーデン明日」、「らくち~の」などの選択肢がありますが、新潟県境ちかくの渋い境鉱泉でフィニッシュです。
「今年は雪すかしせんで、えーのぉー」と湯船のじいさんが話しかけてきます。「ほんまですなー」などと答えつつ、山はもうすこし積もったほうが良いなーなどと思いながら、首まで浸かりました。