猟師の一日とは?丹波山村で狩猟体験イベントも開催!
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    2020.02.13

    猟師の一日とは?丹波山村で狩猟体験イベントも開催!

    私が書きました!
    イベントディレクター/ネイチャーゲームリーダー
    チフユ
    北米大陸西部にあるカナディアンロッキーで6年間スキーやスノボ等のビデオフォトグラファーの仕事を経て帰国。その後日本での山歩きが趣味に。山梨県丹波山村に移住したことで、山間地域のアクティビティと文化風習にどっぷり浸かる。狩猟、料理、自然資源全般を貪欲に探求中。

     丹波山村で受け継がれている狩猟とは?

    森の自然を守るためにも、また人間の生活を営むためにも、山梨県の丹波山村一帯では昔から、シカやイノシシなどの猟を生業にしている人たちが住んでいて、今でもその伝統は守られ受け継がれています。人口570人余りの小さなこの村に、現在30人程の猟師さんがいます(そのうち猟友会所属は25人前後)。およそ村人の20人に1人が猟師という驚くべき数字です。丹波山村では猟師を3世代にわたって行っているという家がありますから、少なくとも歴史は明治の末か大正まで遡ることができます。

    狩猟の文化を世代にわたり守り継ぐ

    村は急峻な山々と深い谷からできていて、平らな畑や水田に適した土地はありません。昔の人々の生活は林業で生計をたて、冬場の食料の動物性たんぱく源は、狩猟で獲れるクマやイノシシ、あるいはカモシカでした。クマの胆は万能薬として、カモシカの皮は防寒具や雨具にと高値で取引されるなど、冬から春にかけては職業猟師がたくさんいた時代が丹波山村にもあったのです。

     猟師のもつ使命とは?

    今では、猟師は職業ではなく鉄砲を撃つ人、というニュアンスで言われることの方が多いようです。しかし本来は、森や動物、そして人間の生活とのバランスを本能で掴んでいる人のことを指しているのだと思います。そしてそのバランスを崩すようなこと、森や自然の掟を破ることは、山の神の怒りを買うと昔から信じられていました。現代の猟師たちは、行政の統制による頭数制限や猟期を守り、管理捕獲の大事さを理解しています。森に住む動物たちが増えすぎても減りすぎても、森や山は壊れるからです。そしてもしルールを破ったらその代償は大きいことを知っています。時代は違えど、役割とその使命は変わらないものだと思います。

    鉄砲を撃つこと、そしてフォーメーション(配置)の重要性

    実際に猟がどのように行われるか、具体的に説明していきましょう。

    シカやイノシシを狙う場合、主に巻き狩りという方法で猟を行います。鉄砲撃ちと猟犬が連携した、グループ猟です。犬は本能で獲物の臭いを嗅ぎつけると追い出しにかかります。驚いて逃げる獲物を鉄砲撃ちが待ち構えて撃つ、という戦法です。鉄砲撃ちのいる場所を「タツマ」といい、犬カケ(猟犬を操る)をする人を「セコ」と言います。

    この絵をご覧いただくとイメージが掴めるでしょうか。 鉄砲撃ちはこのように山間の小さな谷や沢を軸にしてタツマを張っています。タツマ両隣の間隔は200m前後程。地形によってその距離は変わりますが、猟師同士の事故(流れ弾が別の猟師に当たる等)が起きないように、尚且つ獲物の逃げ道を塞ぐのに妥当な間隔でなければなりません。

    獲物は沢を下りるだけでなく、隣の山へと横方向へ抜けることもありますので、できることなら広い範囲でタツマを張りたいところです。そしてセコが数頭の犬を連れて同じく山に入ります。犬をどこから追わせるか、獲物がどこへ抜けるか、数々のパターンを想定し放犬する場所を決めます。このセコの歩きの速さといったらありません。健脚自慢の私ですが、セコについていける人は、セコしかいないだろうと思います。猟は出来るだけ高いところから下へ獲物を落として(追い込んで)いきます。タツマと違ってセコは一日中、山を歩かなければなりません。

    ある日の出猟の行程

    朝7時15分、焚火に集まる猟師。猟師のリーダーである「親方」から本日のタツマの配置が知らされます。作戦会議が共有されるやいなや、早々に山に入ります。「それじゃあよろしく」それぞれの担当者が、各持ち場に分かれていきます。

    午前8時半、担当するタツマに着きます。まず最初にすることは、ケモノみちの足跡の確認です。新しい足跡か、最近使われているものか、どの方向からきたかなどを見ます。タツマで鉄砲を持って待機する場合、獲物がどの方向から来ても見当をつけやすい場所を探します。

    今回の「タツマ」は沢があり、雪が少し残っている

    タツマは受け継がれるもの

    動物が危険を感じて逃げる道、普段使う獣道、それらをよく吟味して、一番効率よく撃てる場所が、タツマになります。そしてこのタツマは、先人から引き継がれてきました。

    オレンジ色に見えるのが空薬莢(からやっきょう)

    写真では、目印に空薬莢が倒木の枝に刺さっています。”ここで撃ったぞ”というタツマを示すマーキングのようなものです。 場所が決まったら次は場づくりをします。足元周辺の枯葉を払い(銃を構えて足を踏み込んだ時、枯葉の音をたててしまうと動物に気づかれてしまうため)座る場所の確保をします。

    オレンジの袋に入っているのが猟銃です

    真冬の気温に耐えられるように、膝かけや敷物などを持って行きます。そしてようやく、銃と弾のスタンバイ。弾はまだ込めませんが、すぐ装填出来るように右のポケットに3発入れておきます。タツマに着いたらいつでも鉄砲が撃てるようにしておかねばならず、以上の準備は速やかにしなければなりません。

    弾帯です。弾(たま)さし、とも言います

    午前9時10分。無線で「スタンバイ完了した」と、一番歩いて遠いタツマから連絡が入り、ほどなく犬カケ開始。「じゃあ放犬するからね」の声で、一気に気持ちが引き締まります。ここからは寒さとの戦い、セコと獣の駆け引き、猟犬の大追跡がくりひろげられるのです。

    銃声に続く猟師たちの掛け声

    午前11時30分。私のタツマの近くには、どうやら犬は入ってきていません。1度だけ、目の前の尾根でけたたましく犬が吠えたものの(獲物を追っているときの吠え方はそれとわかるような声になります)こちらに囲い込んでくる気配がありません。犬の走り去った沢向こうの仲間のタツマからも、いっこうにならない銃声。犬もどうやら獲物を見失ってしまった模様。

    獲物の気配を探る猟犬。頬の縫い傷は獣を追って闘ったときのもの

    この付近に獲物はいない、そう思うと寒さが余計にこたえます。足先が感覚を失っています。親方、そろそろ今日は猟を止めるって言わないかなあ。時間が経つに連れ、気持ちも徐々に緩んできます。猟の時間は長くても2時間が限界です。獲物のいない山、犬が追わないタツマに長くいることに意味はありません。ですが、タツマ解除の号令を聞くまでは、決してここを離れられないのです。

    午前11時40分。3発の銃声が私のタツマのエリア内で聞こえました。音の大きさからいって、多分私の2つ上に位置しているタツマ。この銃声にすぐに反応する猟師たち。朗報が聞きたくてうずうずしています。「当たった?」「おお、当たったみてぇだな」「ほっほーう。お手柄でした」

    獲物を仕留めたあとの解体作業

    午後12時。獲物を仕留めたあと、その場で解体するか、麓の加工場に下ろすか瞬時に判断しなくてはなりません。今回は山林での解体と決まり、近くのタツマの猟師は現場へ急行します。そこには、獲物のイノシシが横たわっていました。顎に1粒弾1発。傍にはイノシシを追ってきた犬が2匹、繋がれていました。自分の獲物を人間に横取りされたと興奮しているのでしょうか、イノシシが気になって仕方がない様子。

    シカを撃ったあと解体に追われる猟師たち

    火をおこし、その周りで休憩を兼ねたお昼ご飯をとります。そしてすぐさまその場で解体します。オオバラシと呼ぶもので、皮を剥ぎ、四肢とロース、心臓を取り分けます。イノシシの内臓(腸と胃袋)は川の水でよくしごき、モツ鍋用とします。筋のついた固い肉は犬たちに与えます。獣の味を覚えさせることも大事なのです、なにより猟の立役者ですから。バラした肉は各自リュックに詰め、山を下ります。この日、イノシシ含めて4頭の獲物が獲れました。この後、小屋へ戻り、猟に出た人数分に均等に切り分けて終わりです。

     山の神への儀式

    猟を終え、解体も済ませると「やまのかみ」が始まります。猟師の集まる小屋にある神棚に、お神酒とその日獲れた獲物の心臓をお供えして、猟の無事と自然の恵みへの感謝を捧げて宴会をするという習慣儀式です。 山の神様の名前はオオヤマツミノカミだと村の資料に書かれています。獲物の数ぶんの心臓とお神酒が祭壇に並びます。

    頃をよくして、親方が一声かけて、このお神酒を一口づつ廻し飲みをします。獲物を取った猟師から始めに口をつけ、隣の猟師へ手渡し。その時コップは決してテーブルに置いてはいけません。一口ずつ飲んでは廻し一周回って初めの猟師の元に返します。この所作が私にはとても神妙に思え、伝統を肌で感じるところでもあります。

    撃ったもの、撃ち損じたもの、全員でその日一日の猟果を肴にお酒をかわすのですから。肴にされる猟師、撃ち当ててヒーローとなる猟師、それを囃し立てる面々。

    イノシシの骨っしゃぶりという猟師料理をつつく猟師さん。

    猟銃で狩猟をするのに必要な免許

    実際に狩猟するにはどのような免許が必要なのでしょうか。狩猟免許には2種類があって、猟銃を使って行う狩猟免許と、わなや網といった猟具を使って行うのに必要な狩猟免許があります。これは狩猟法で決まっているもので、自身が取りたいほうの免許を取得することになります。

    猟銃所持についても決まりがあります。猟銃を持つには、銃砲所持許可を自分の住所がある都道府県の警察署に申請し、技能講習と教習を受けなければなりません(狩猟ではなく射撃をする方も必要です)。また所持する鉄砲の型、銃保管のきまり、実弾の使用実績、身辺調査など公安に厳重に管理されることになります。こちらは銃刀法という法律によって、定められています。

    実際に狩猟を体験するにはどうしたらいい?

    狩猟の現場や、現役の猟師さんに、なかなか出会うことは難しいと思います。狩猟について、獲物を狙うときのコツや、山を歩く際の心構えやマナーなど、狩猟免許を持っているだけでは知り得ないさまざまな情報に触れることはできないものか。そこで丹波山村では、狩猟体験ができるイベントを行っています。猟師さんの生の声を聞くことはとても貴重なはず。興味のあるかたはぜひ参加してみてください。

    ■オオモノウチとトマリヤマ IN 三条の湯

    開催場所:山梨県丹波山村 三条の湯
    料金:¥25,000(税込)
    内容:1泊3食、入浴、狩猟ガイド、 国内旅行保険、のめこい湯優待券付
    定員:15名(2月15日(土)以降のご応募は先着順)
    申込みURL: https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeaToNE_MD0Nmye85IytxZolqzGDvYbDzvTARF9GQlk18MO7g/viewform

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