サポテカ文明の遺跡が残るメキシコ・オアハカ州
メキシコの南部オアハカ州は、紀元前10世紀というはるか昔から2500年もの永きにわたり、サポテカ文明が栄えた地域です。
サポテカ文明は、メソアメリカ(スペインの征服以前にマヤ、アステカなどに代表される高度文明が栄えたメキシコ高原・ユカタン半島などの地域)で最古の文字「サポテカ文字」や、260日暦が使われたことで知られています。
サポテカ文明は、紀元前500年頃に建設された「モンテ・アルバン」という山の上の神殿都市を中心にオアハカ盆地で栄えたと言われています。この遺跡は現在、世界遺産にも登録されており、サポテカ文明の繁栄を偲ぶことができます。
オアハカ盆地には、モンテアルバンを中心に、北のエトラ谷、南のサーチラ谷、そして東にトラコローラ谷があります。それぞれの谷に遺跡が残っていますが、中でもトラコローラ谷の「ミトラ遺跡」は、アメリカ大陸のなかで最も美しいと謳われる壁面のモザイクで知られています。
今回は、この山と谷に潜む2つの遺跡を紹介します。
世界遺産「モンテ・アルバンの古代遺跡」の見どころ
1987年に世界遺産に登録された「オアハカ歴史地区とモンテ・アルバンの古代遺跡」は、オアハカ州の州都、オアハカの町からバスで30分ほどでたどり着く、独りでも出かけやすい遺跡です。
世界遺産、町からのアクセスも良いとくれば、かなり観光地化しているのでは?と思ったのですが、地図や看板、遺跡内ツアーなどもいまいち整備されておらず、古代遺跡の中をかなり自由に回ることができます。
プラットフォルマ・スールからの絶景
モンテ・アルバンにはたくさんのピラミッドがあり、かなり急な石段ですが、どれも自由に登ることができました。中でも遺跡内で最大のプラットフォルマ・スール(南の基壇)からの眺めは圧巻です!
この遺跡は山を削って作ったと言われていますが、上から見ると真っ平らで広ーい通りが続いてる様子に驚かされます。また、街全体が盆地の中の山の上に築かれただけあって、盆地の底に当たる町々、そして背景に山並みが並ぶ雄大な風景を見渡すことができます。
また、拝殿の中にも入ることができます。
「踊る人」のモデルは…?
「踊る人(ロス・ダンサンテス)」の石版が飾られている神殿は必見です。この地下建造物は 100BC に遡るモンテ・アルバンで最も古いものだそうです。
「踊る人」は、踊っているように見えるとその名が付いているものの、実は戦いに負けて捕虜となり、去勢された他部族の姿なのだとか。サポテカ文字で彼らの名前が記されているそうです。ちなみに石版のオリジナルは、美術館内にあります。
サッカー場のような球技場も
また、モンテ・アルバンにはサッカーのような球技が行なわれた場所も残っています。この球技は儀式的な意味もあり、負けたら死刑というようなかなり命がけのゲームが行なわれていたそうです。
ミステカ族の墓
メキシコのこの辺りは、まだまだ未発掘の遺跡がたくさんあるらしいのですが、駐車場の脇でも「第7墳墓(Tumba 7)」住居での作業が進行していました。ここにはサポテカ族の後にモンテアルバンに入ったミステカ(ミシュテカ)族が葬られていたそうで、彼らの財宝がたくさん発見されました。
第7墳墓は、メキシコ考古学史上で最大の発見だと言われているにもかかわらず、ちょっと離れているせいか、2名の発掘員以外の姿はありませんでした。
オアハカ文化博物館
モンテ・アルバンと共に世界遺産に指定されているサント・ドミンゴ教会(Templo de Santo Domingo de Guzmán)のオアハカ文化博物館(Museo de las Culturas de Oaxaca)。
ハイライトでもある黄金やターコイズの仮面が眠っていた場所に独りっきりでいるなんて、とても不思議な気分でした。
モザイクに魅せられる「ミトラ遺跡」
ミトラ遺跡(Zona Arqueológica de Mitla)は、トラコローラ谷にあるサポテカ文化の残る場所。オアハカの街から東へ43km、車で1時間ほどの距離です。
「ミトラ」は、ナワトル語で「死者の場所」を意味する「Mictlán」からきていますが、サポテカ語では「休息の場所」を意味する「Lyobáa」と呼ばれていたそうです。
ミトラは、モンテ・アルバンが衰退した後に儀式や祭礼を行なう新たなサポテカ文化の中心となりました。この場所は、メキシコで唯一と言われる細かなモザイクが見どころです。
モザイクは、サポテカ族の後にこの地を支配したミステカ族のものだという意見が主流でしたが、国立人類学歴史研究所(INAH)によると、サポテカ族のものだと考えられるそうです。
教会のモザイク
スペイン人が到来した際には、この場所にカトリック教会を建てたため、モザイクのある壁面が教会を取り囲んでいます。
6本柱が並ぶ広間
教会の周りにお土産物が立ち並び、また遺跡の合間に住居が立つなど、秘境感はありませんが、モザイクで埋め尽くされた部屋や大きな岩から切り出された継ぎ目の無い6本の柱が並ぶ広間は必見だと思います。
いつかこんな異国の地を訪れて、遥か昔の人たちの営みに思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
※この記事は2019年12月の取材撮影をもとに構成しています。
旅行、お酒、食事、キノコ狩り、カヌーなどが大好きです。オレゴン・マイコロジカル・ソサエティ会員。