約2500万年さかのぼり、日本海形成の爪痕を海岸線に色濃く残す山陰海岸ジオパーク。その美しい海岸線を歩くロングトレイルが、いま産声をあげようとしている。
山陰海岸ジオパークトレイルの総延長は、なんと230km!
地球の成り立ちを体感できる大地の公園=ジオパーク。ユネスコが認定する世界ジオパークは、日本に9つある。そのうちのひとつが、鳥取、兵庫、京都の日本海沿岸エリアに広がる山陰海岸ジオパークだ。その海岸線を歩くロングトレイルが、開通間近だというのでひと足先に歩いてきた。
東の起点は、丹後半島に突き出た経ヶ岬(きょうがみさき)。柱状節理(ちゅうじょうせつり)が経巻(経文を記した巻物)を立てたように見えることからこう名付けられたというが、まさに言い得て妙。そんな険しい海岸線に沿って歩く。立岩(たていわ)、白いビーチ、かえる島…海と波と岩の三者が共演する自然美が次々と姿を現わし、「次はなんだ?」とハイカーの背中を押す。
海水浴場に隣接したキャンプ場も点在し、テント泊で歩くことも(冬季を除く)。さらに嬉しいことに一日の疲れと汗を洗い流す温泉が、いたるところに湧いている。地球がつくった造形を楽しみ、地球が温めた湯に浸かって一日をしめくくる。大地に抱かれたジオパークらしい、なんて贅沢な歩き旅だろう。
兵庫県香美町からはJR山陰本線とほぼ並行しながら西へ。たとえば、電車を使って東浜駅を起点に浦富(うらどめ)海岸、鳥取砂丘、久松山(きゅうしょうざん)を経由し、鳥取駅でフィニッシュなんていう1DAYハイクも可能だ。
息を飲むような情景は自然ばかりではない。居組(いぐみ)や田後(たじり)といった昔ながらの港町、旅情を醸し出す城下町など、その土地の歴史、文化を肌で感じられる。そして歩く源となる日本海の美味や湿潤な気候に育まれた地物、地元に愛される美酒もトレイルを楽しむいいスパイスとなる。ジャパニーズテイストをたっぷり含んだ歩き道は、世界に誇れるコースト・トレイルだった。
山陰海岸ジオパークトレイルの見どころ紹介!
経ヶ岬
東の起点は、近畿地方の最北端にある経ヶ岬。灯台から波打ち際へ下りると、安山岩からなる柱状節理の海食崖が出迎えてくれる。
立岩
海岸線に突如そびえる高さ20mもある巨大な一枚岩。1,500万年前に地下から噴出したマグマが冷えて固まってできた安山岩だ。
夕日ヶ浦
日本の夕陽百選に選ばれた夕日の名所。サーファーが波乗りに興じ、温泉街から湯気が上がる。近くに鳴き砂で有名な琴引浜(ことびきはま)も。
かぶと山
サブコースのかぶと山の山頂展望台から久美浜湾を見下ろす。メインコースは日本海と久美浜湾を隔てる正面の砂州に延びている。
城崎マリンワールドGEOガイドセンター
ガイドセンターに併設されたジオカフェで但馬牛をつかったハンバーガーを食べ休憩。日和山海岸を望むロケーションは最高!
今子浦(かえる島)
香美町の今子浦海水浴場にある名勝。北前船で航海に出た男たちが無事郷土に“かえる”ことを祈願した岩でもある。
「天空の駅」餘部(あまるべ)駅
JR山陰本線の餘部駅は高さ約41mの余部橋梁にある。エレベーターで上がって旧線路を歩くことができる。
浜坂温泉
新温泉町の街中にある浜坂温泉源泉塔。浜坂は山陰を代表する味覚、松葉ガニの日本屈指の漁獲量を誇る港町だ。
山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館
山陰海岸ジオパークの魅力をさまざまな資料や映像、生き物で学べる施設。トレイルに詳しいスタッフも常駐し、情報収集もできる。
千貫(せんがん)松島
一本松が頂に生えた高さ10mの洞門(中央上)。花崗岩の離れ岩で、海水浴客で賑わう岩美町・浦富海岸を代表する奇岩である。
鳥取砂丘
トレイルのハイライトとなる国内最大級の砂丘を横断。靴を脱いで裸足で歩けば、よりジオパークを身近に感じられるだろう。
鳥取城
鳥取市内を見下ろす久松山から鳥取城跡へ。久松公園として整備され「日本さくら名所100選」にも選ばれた市民憩いの場所。
吉岡温泉
日帰り温泉施設「一ノ湯」や旅館が立ち並ぶ鳥取市の歴史ある温泉郷。源泉50.8度Cを薄めた足湯は、歩き疲れた筋肉に染みる~。
鹿野(しかの)城下町
鷲峰(じゅうぼう)山の麓に広がる城下町、鹿野。京格子のある町屋が点在し、軍事上の理由からT字路やL字路が多い情緒ある街並みだ。
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山陰海岸ジオパークトレイルの情報はこちらから
http://sanin-geotrail.net/