はじめて「山に行く」と言うと、装備を整えて、登山計画を立てて、電車やバス、宿泊先を調べたり予約したりと、大イベントになってしまうかもしれません。また、事故や怪我を恐れれば、気軽に家族や友人を誘ったり、一人でふらりと行きづらいものかもしれませんが、僕はもっと自由なものとして山歩きを捉えています。もちろん、訪れるフィールドにもよりますし、人気の登山道ではハイカーの邪魔にならないような配慮や、動植物へのダメージを与えない工夫は最低限必要です。
こうあるべき、という山歩きは本当はなくて、試行錯誤しながら自分が感じる「心地よさ」「楽しさ」「開放感」などを、探っていくことがいいのではないかなと思います(安全第一なのは大前提として)。そこで僕なりの「山の楽しみ方」をご紹介します。
1.山登りではなく、森の中でゆっくり過ごす楽しみ
僕は山を歩くとき、必ずしも山頂を目指していません。「今日はどこでメシを食おうか」とか「ちょっと時間もあるし、ブナ広場でゴロゴロしてから帰るかな」といった気持ちで山に行くことが多いです。たいていは、山に登りに行った先で見つけた森の広場や沢のほとりなどで、「落ち着くなぁ」とか「綺麗だなぁ」と感じると、それだけで大満足。そして下山したあとに「あの場所にまた行きたい!」と自然にその場所へと再び向かうものです。
そこでヨガをやっても、昼寝をしてもいいと思います(自然やほかの登山者を配慮したうえで)。自分だけのプライベート空間を外に持っているというのは、贅沢なもの。季節や天候が変われば雰囲気もまた変わって、新しい発見があり、楽しみは尽きません。
<オススメ>丹波山天平でのんびりする
僕が勤務する「三条の湯」に向かうコースの途中に、丹波山天平(たばやまでんでいろ)があります。親川バス停~サヲラ峠経由の登山道にあるのですが、前後の森林帯を含めて穏やかな雰囲気が広がっていて、のんびり時間を過ごすのに適していますよ。
2.その一瞬を「目的」に定めて山に赴く楽しみ
「逆さ富士を撮りたい」と思い立って富士五湖を回ったことがありますが、そこで目にしたのは沢山のカメラマン達。そこで彼らから教えてもらった情報で、ダイヤモンド富士や、夕焼けの赤富士に出会えた経験があります。
山にも、条件とタイミングで出会える景色があります。日の出前の地平線に浮かぶブルーライトや、木洩れ日で輝くシャクナゲの森、曇天でこそ不気味さを放つ深奥のゴルジュ帯(岩に囲まれた谷)。その一瞬を狙うといった、”自分だけの”楽しみ方を模索してみても楽しいはずです。
<オススメ>飛龍山のシャクナゲ
「三条の湯」からもほど近い、飛龍山。毎年6月初旬にかけて、シャクナゲの花が美しく花開きます。特に当たり年だと、シャクナゲのトンネルができるほどの見応えがあるとか。
3.ワイルドな世界にどっぷり浸かる楽しみ
僕が山で一番楽しく感じるのは”野生に戻る”瞬間です。沢登りやバリエーションルートなどの管理されていない道を辿って歩くとき、自分自身で残りの体力と先の危険を把握して、突き進むか引き返すか判断していく旅は本当に面白いと感じています。無事に下山することを最終目標にはしながらも、大自然の中に身を置いて舵を切ることは、現代社会で衰えつつある野生力を取り戻すチャンスです。高尾山などのハイキングであってもどのコースを選ぶか、体力的に辛い瞬間に引き返すか、こんな判断も野生に戻る一歩目と言えます。
※バリエーションルートに興味を持たれた方は、コースにそれぞれグレードがあるので、専門の地図を参考に調べてみてください
<オススメ>御岳山の場合のバリエーションルート
登山専用の地図を買って、高尾山、御岳山や奥武蔵などの低山のマイナールートをまずは歩いてみてください(関東近郊にお住まいでない方は、ご自身の居住エリアの低山をチェック)。本当のバリエーションルートは、地形図やコンパスを使えるようになってから歩きましょう。また、下りは迷いやすいので、挑戦する場合は登りのルートでお試しを。
例:御岳山の場合
1.御岳山ケーブルカー~ロックガーデン
2.古里駅~御岳山
3.鳩ノ巣~大楢峠~大岳山 (2020年3月現在「大楢峠~御岳山」通行不可)」
4.武蔵五日市駅~金比羅尾根~日の出山
5.御岳山~大岳山~馬頭刈尾根~瀬音の湯
6.奥多摩駅~海沢探勝路~大岳山
このように少しずつレベルアップして、いろんなルートを経験していくと良いと思います。
僕なりの「山の楽しみ方」を紹介しましたが、山には”こうでなければならない”というルールなどありません。人が決めたいくつかのルールやマナーがありますが、捉え方も楽しみ方も人それぞれ。本来は自由なものだと僕は思います。体験したり考えたりしながら、自分なりの「山の楽しみ方」を見つけに山へ来てください。