千本の桜にも負けない「一本桜」の存在感
「千本桜」と呼ばれる桜の名所で、人混みのなか圧倒的な数のソメイヨシノが咲き誇る様を眺めるのもいいけれど、里山に咲く枝ぶり見事なシダレザクラやエドヒガンの「一本桜」とゆっくり時間を過ごすのもまた感慨深いものがある。福島県のほぼ中央に位置し、東北新幹線で東京から約1時間半の距離にある郡山(こおりやま)市の周辺には、そんな一本桜が数多く存在している。
これらは一部を除き観光地として駐車場などが整備されているわけではなく、狭い農道の脇の私有地に咲くものも多い。そこで一本桜をめぐる旅の手段として、自転車をおすすめする。JR磐越東線(ばんえつとうせん)三春駅(各駅停車で郡山駅から12分)を起点に郡山駅に戻る約30km、のんびり走っても半日あれば楽しめるコースである。
福島県内の写真愛好家らでつくる「桜を愛するアマチュアカメラマンの会」が作成した2020年版の『県内「一本桜」番付表』に掲載される桜のうち、強豪4本(プラス、番付に載らない1本)の立ち姿に会うことができる、見応え充分の”取組”だ。
1本目:関脇「雪村桜(せっそんざくら)」
三春駅から「雪村桜」までは約1km、足慣らしにはちょうど良い距離である。室町時代後期・戦国時代の水墨画家にして僧侶、雪村が最晩年を過ごしたとされる庵に咲くどこか妖艶な1本。
一度三春駅方面に戻り、町内の精肉店などで販売されている特産品のピーマンを使った「三春グルメンチ」を手に入れておこう。町内には和菓子屋さんも多く、行動食を補給するには困らない。
2本目:東の横綱「三春滝桜」
雪村桜から「三春滝桜」までは約8km。多少の上り下りはあるが、桜の時期は観光バスや自家用車で渋滞する道も自転車なら自分のペースで走ることができる。
3本目:西の横綱「紅枝垂(べにしだれ)地蔵ザクラ」
次に目指すのは三春滝桜から約5km、西の”横綱”「紅枝垂地蔵ザクラ」だ。三春滝桜の娘にあたる桜といわれ、母と比べれば小ぶりに見える。しかし実際は枝張(横幅)が18mもある立派な姿。途中の県道沿いには”前頭22枚目”の「伊勢桜」、近くには”前頭20枚目”の「五斗蒔田(ごとまきた)桜」もあるので、ぜひ訪ねておきたい。標高が高いため、どちらも三春滝桜より6日ほど開花が遅くなる。
4本目:小結「上石(かみいし)の不動ザクラ」
阿武隈(あぶくま)高地の上り下りをのんびりと走れば「上石の不動ザクラ」まで約5km。小高い丘の上にある不動明王をまつる不動堂の境内にあり、晴れていれば青空をバックにピンク色の花が映える。
5本目:「龍光寺(りゅうこうじ)の桜」
最後に紹介する一本桜「龍光寺の桜」へは約6kmの距離となる。番付表には載らないが、花をつけた枝の間をくぐりながら階段を上ると地蔵菩薩堂が見えてくるという体験はここでしか味わえない。周辺には寺院が多く、それぞれに見事な桜が植えられている。ゴールの郡山駅までは約5km。駅への道も桜が多いので気が抜けない。
例年の見頃は4月中旬
今回紹介した一本桜は山間部にあるものが多く、例年の見頃は4月中旬〜下旬となっている。日本気象協会が3/23日に発表した2020年の各地の開花予想によれば、三春滝桜は開花が4/3、満開になるのが4/10。満開から散り始めまで約1週間ほど見頃が続く。最新の開花状況は各地の観光協会などのホームページで確認を。
コースの途中には農家の庭先や田んぼのあぜ道などあちこちに小さな一本桜の姿がある。寄り道しながらのんびりと郡山の春を楽しもう。
問い合わせ先/参考資料
郡山周辺の一本桜の情報をまとめたパンフレットは郡山駅の観光案内所などで配布中。※ネットでも閲覧可能
『#郡山へ行こう さくら物語』https://www.kanko-koriyama.gr.jp/sakura/
『三春桜浪漫紀行』http://miharukoma.com/download
【問い合わせ】
郡山市観光協会 024-954-8922
みはる観光協会 0274-81-3690