通勤通学をエクササイズの時間に。あなたにあった自転車選びとは?
毎日の出社や登校の移動手段として、自転車という選択肢が市民権を得て久しい。街中を軽やかに走り抜け、毎日の通勤時間を健康維持のために費やすことが出来る。満員電車の中でくたびれた顔をして夕刊紙を読まなくたって良い。
都内だと公共交通機関で移動するよりも、自分の脚でペダルを漕いだ方が早いケースもさほど珍しくはない。とは言えこれからマイバイクを手にしようとしている人にとって、どんな種類の自転車を手にするべきか選択肢は広く、正しく選ぶことが容易とは言いづらくはなかろうか。
今回は、自転車歴だけはやたらと長い自分が、人から通勤車の相談を受けた時に選択肢のひとつとして紹介している「シングルスピード」という自転車について、その魅力やメリットについてお話ししたいと思う。
シングルスピードって、どんな自転車?
まずシングルスピードの定義とは、前のギアと後ろのギア各1枚がチェーンで繋がったものを指すのである。今日も明日もずっと同じ歯車比でペダルを漕ぎ続けることとなり、変速機や変速用のワイヤーなどが無いシンプルな見た目が特徴だ。見た目だけでなく、普段取り付いているものがない分、車体が軽くもなるし値段も優しくなることが多い。
ところで新しく自転車を購入する際、たくさんあるモデルの中から何を基準に選ぶべきだろうか。自明のことながらその自転車でどこを走るのか、がポイントとなる。野山を走り回るならオフロードタイヤを履いたMTB、峠を越えて遠くへ出かけたいなら多段ギアで軽量なロードバイク。では、通勤でなだらかな道を走るのであればどうだろうか。
語弊を恐れず述べれば、アップダウンの激しい坂道を登るような通勤路でなければ、前後合計で20段以上も選べるギアは必要ない。それこそ人間の脚が持つトルクバンドは意外と幅広いもので、少々の坂道であればギアがひとつであっても登り切ってしまう。
またデイリーユースとなる通勤車では、壊れないことがひとつのポイントとなり得る。ギアが無い分、変速機が壊れることもないし調整も不要だ。更に同じ予算であっても、ギアを多段化させる費用分を他の魅力的なパーツに充てることもできると思う。
どんなジャンルにでもシングルスピードは選択肢として存在している
ちなみにシングルスピードというものは自転車の種類ではなく、あくまで機構の話である。例えばMTBにもシングルスピードのものがあれば、ロードバイクでもシングルスピードのものは存在している。BMXは元々シングルスピードが標準であるし、競輪で使われるものはシングルスピードでかつ後ろのギアがフリーではなく固定されていてピストと呼ばれる。つまりは、自分の好きなスタイル、好きな見栄えの自転車を選んで、そこからシングルスピードの自転車を選ぶことが出来ると言える。
街中で走るシングルスピードの最たる例はいわゆるママチャリだ。足を通し易いスローピングフレームに沢山の荷物が乗るカゴ、チェーンへの噛み込みを防止するガードなどなど、快適装備がふんだんに盛り込まれているが、あえてここでは割愛させていただくとする。
お気に入りを街仕様に改造するのもあり
個人的にオススメしたいのは、街とは別用途のカテゴリーにあたる自転車を街乗り仕様に改造するパターンだ。上の写真は私のコミューター=通勤車だが、元々はシクロクロスという泥の中を走る競技で使用していたレーサーバイクだ。市場のブレーキ規格が進化したことでレースで使うには少し心許なくなってしまったが、街中で乗る分には充分なスペック。元々ドロップハンドルが付いていたが、ステム一体型の国産ハンドルバーとフロントキャリアを取り付けて、その名もカフェレーサー仕様と名付けた。
カフェレーサーとはイギリスのオートバイ乗りたちがカフェに集ってバイクを自慢したり走らせたりしていたスタイルのことを指すが、そういった思想を自転車に落とし込んでみた。ちなみにカラーも元々は紫のメタリックだったが、スバルXVという自動車の色(サンドカーキー)に塗り替えた気合いの一品。
他にもベースとなる車両はいくつもあって、例えば上記のピストは今や街中を美しく走る定番の車両だ。トップチューブという本体上部のパイプが地面と水平になるものはホリゾンタルと呼ばれ、自転車そのものの美しさが際立つ。写真では前後のブレーキが取り付いていないが、街中で走る際にはもちろんレバーとキャリパーを取り付けることが可能で、トラック競技場の上での華麗な走りを、そのまま街中の路上で味わうことが出来るだろう。
終わりに
入学や入社のシーズンを終え、これから少しずつ気候も快適な時期となってくるだろう。通勤通学のパートナーとしてシングルスピードの自転車が選択肢のひとつとして認識されることを期待したい。