以前より自宅にいる時間が増えて、ハンドドリップデビューした人も多いのではないでしょうか。そんな一歩を踏み出した方に、今回はコーヒー豆の選び方をお話します。コーヒー豆は産地や精製方法、焙煎度合い、抽出方法によって様々な味に変化しますが、ほとんどの方は焙煎されたコーヒー豆を買われると思います。まず焙煎度合いによる味の違いをお話したいと思います。
焙煎度合いによってどう味が変わるのか
まず焙煎(ロースト)とは、簡単に言うとコーヒーの生豆を煎ることで、生豆の水分を飛ばし、熱による化学反応を促します。焙煎する前のコーヒーの生豆は青臭く、色も白っぽい色や薄いグリーンの色をしています。それを焙煎することで、初めてコーヒーのあの香ばしい香りや味が生まれるのです。
焙煎度合いは大きく分けて浅煎り、中煎り、深煎りの3つで、細かく分けると8つの焙煎度合いに分かれます。浅い方から順にライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストとなります。
ライトローストとシナモンローストは浅煎り、ミディアムローストとハイローストが中煎り、そしてシティローストが深煎りの始まりとなります。しかし、明確な基準はなく焙煎する人や各お店によって基準が異なります。
たとえば、A店で売っているフルシティローストがB店のミディアムローストと同じくらいだったなんてことは日常茶飯事。私も数年前に旅行先で入った喫茶店が自家焙煎をされていて、うちと同じブラジルの生豆を使われていました。焙煎の違いを知りたくてブラジル中煎りを注文したら、うちのブラジル深煎りに近いコーヒーが出てきてビックリした経験があります。別にそのお店の焙煎士が悪いわけではなく、そのお店ではその焙煎度合いが中煎りだっただけなのです。
浅煎りは苦味がなく、酸味を楽しむコーヒーで(酸味=酸っぱさではなく、フルーツの甘酸っぱさやサッパリ感)、中煎りは酸味と苦味のバランスがとれてる豆、深煎りは酸味がなく苦味やコクを重視をした豆になります。
つまり、煎りが浅いと酸味があって苦味はなく、そこから焙煎度合いを深くしていくと酸味は減って行き、苦味が増して味が変化します。当然、どちらも混在している度合いもありますし、中煎りでも浅煎り寄りの中煎りや、深煎り寄りの中煎りもあるので、ぜひ試してみてくださいね。
自分の好みを知っておこう
たとえば、「私は酸っぱいのが嫌いだからコロンビア深煎りで!」と言われたとしましょう。お客様に全く同じ生豆から焙煎した酸味のあるコロンビア中煎りを試飲してもらうと「酸っぱくない!」と言われました。やわらかい味と同じ産地のコーヒーでの味の違いに驚かれたこともありました。
コーヒー豆には浅煎りや中煎りに適したコーヒーもあれば、深煎りに適したコーヒーもあり、浅煎りから深煎りまで楽しめるコーヒーもあります。ですから、まずはいろんなコーヒーを飲み比べてみてください。
また、「コーヒーはブラックで飲まないとコーヒー通じゃない!」と言われる方もいますが、コーヒーは嗜好品です。ブラックも含め、自分が美味しいと思う飲み方で飲むのが一番だと私は考えます。まずは自分の好みを知ること、そして自分の好みのコーヒーでフィールドでも美味しくリラックスするようなコーヒーを淹れてくださいね。
スーパーで買ったコーヒー豆が膨らまない理由
よくSNSなどでドリップシーンの写真があがります。豆の粉がドーム型に膨らんでいる写真を見かけて、「よし、自分も!」と、スーパーでコーヒー豆の粉を買う人もいます。しかし、ドリップしてみたら砂が水を吸うように全く膨らまず、お湯がサーバーに落ちてガッカリした経験はありませんか? なぜスーパーで買った豆(粉)は膨らまないのでしょうか。答えは焙煎してからの時間がずいぶん経過しているからなのです。
コーヒー豆は焙煎し終わって、焙煎機から出た瞬間から劣化が始まります。美味しく飲めるのは焙煎してから豆の状態で保存して1カ月、粉の状態なら2週間と言われています。
焙煎直後が一番膨らみます。確かに膨らむのは新鮮な証拠ではありますが、焙煎直後は出過ぎるガスがお湯と粉の接触を妨げて、結果的に味わいが薄くなります。飲み頃なのは焙煎方法にもよりますが、焙煎してから4〜7日後から2週間ほどだと言われています。それを考えると、スーパーに置いてあるコーヒー豆はガスが出尽くしている可能性があります。
焙煎工場から入荷してすぐの豆に当たればラッキーですが、ずっと陳列棚に鎮座していた豆を買っちゃうと悲劇です。ですから、キャンプなどに持って行くときは、キャンプの1週間前にビーンズショップで焙煎してもらった豆を冷凍庫に保存し、持って行くのが良いでしょう。冷凍すると多少劣化を遅らせることが出来ます。
お家で飲むときも目安として大体2週間で飲み切る量を買うようにして、夏場は特に冷凍庫に保存する。キャンプではクーラーの中に保存するようにしましょう。