【体験!個性派ゲストハウス1】
旅人が泊まる男女別相部屋(ドミトリー)の安宿というイメージのあった「ゲストハウス」。近頃は、旅人だけではなく、地域おこしや地域の交流の場としても注目を集めている。古民家をリノベーションしたり、おしゃれなデザインだったり、色んな体験ができたりと個性的な宿がいっぱい! そんな宿を、毎月1軒ご紹介していきます。
昭和村という限界集落にゲストハウスがある!?
観光もさほどさかんではない地で、なぜにゲストハウスを? もしや、オーナーさんは、とてつもなくチャレンジャーな人なのか? それとも、何も考えていない系? 脳内に疑問があふれて止まらない。
福島県奥会津の山間にある人口約1300人の村。茅葺の屋根に赤いトタンをかぶせた家々が並ぶ。今回訪れたゲストハウス『とある宿』がある昭和村だ。
JR只見線会津川口駅からバスで約30分。または、会津鉄道会津田島駅からバスで約40分(会津田島駅発着のバスは、残念ながら12~3月運休)。どちらからも、いくつかの峠を越えて村に入る。
ある年の冬。会津川口駅からバスに乗りこんだのは、村人とおぼしきハンチング帽をかぶったおじいちゃんと私のたった二人。車内で村の話を聴かせてくれるおじいちゃん。『とある宿』に泊まるコトを伝えると「まゆみさんって人がやっていてね、村の人と結婚してね~」と、まるで孫のコトのようにうれしそうに話してくれる。バスの運ちゃんも「とある宿ね~」と宿の目の前で停まってくれるというスペシャル対応! 村の人が語りたくなる宿は、地域に溶け込んだ居心地の良い宿に違いない。私の直感がうれしそうにささやいた。
引戸を開けると、土間の玄関が広がる。「こんばんは~」ほんわかした雰囲気の女性が現れた。『とある宿』あるじの時田麻弓さんだ。私の予想に反し、良い意味でチャレンジャーな人には全然見えない。「これから、晩ごはんを作るところなんです」そう、ココはみんなで一緒にごはんを作るスタイルのゲストハウス。麻弓さんと宿泊客でおかずを担当し、麻弓さんの旦那さんがごはん炊きの担当だ。
「うちに宿泊されるお客さんには、これで、ごはんを炊くんですよ」え?え?ごはん炊くとかの以前に、コレ、調理器具なんですか!?どう見ても、弥生時代のひ●ぎにしか見えないんですけど(失礼!)。
中には炭が入っており、まるで火鉢がすっぽり甕の中に入っているかのよう。「蒸しかまど」というのだそう。熱効率が良く、少量の燃料で炊くことができる。炭さえあれば、電気もガスも不要という優れもの!しかも、使用後の炭は消し炭としても再利用できて一石二鳥だ。
つやつやのごはんが炊けるこの道具、大正~昭和初期に料理屋等で使用されていた。米にこだわりのある寿司屋やうなぎ屋では今でも使われているのだとか。最近では、家庭用サイズで1合炊きのものも作られているもよう。(気になる方は「蒸しかまど」で検索を~)。
本日のメインはお鍋。宿で出す野菜も米もほとんど自家製。味噌も手前味噌という手作りもの三昧。きっと、農と丁寧なくらしがしたくて田舎に移住してきたんだろうな~、麻弓さん。憧れるな~。
「いえいえ、もともと田舎暮らしには全然興味なかったんですよ(笑)」・・・はい!? またもや良い意味で予想を裏切ってくる麻弓さん。千葉のお都会エリア出身の彼女。海外専門の旅行会社勤務後、NPO活動をしている知人に紹介され昭和村へ。村で2年間のNPO活動をした後、人と人が交流する場を作りたいと思いゲストハウスを作ろうと思い立つ。が、村には空き家がなく悶々していた頃、偶然この家に出会った。