かつて『BE-PAL』で連載していた「なんでも飼ってやろう」のトミちゃんこと富田京一さんが帰ってきた! 珍獣飼育40年以上のノウハウをつめこんだ新刊『ヘンな動物といっしょ』から、よりぬきをお届けします。
キュートな見た目に騙されちゃダメ!
おもに中南米産の、わりと大きな草食性のトカゲをまとめて「イグアナ」という。知名度ではガラパゴス諸島のウミイグアナがナンバーワンだろうが、値段が自動車何台分かするので、私は一生飼えない…というか買えない(涙)。
ペット屋さんで見かけるのはグリーンイグアナで、飼育下で繁殖した個体がほとんど。全長30㎝前後の赤んぼうが多く、黄緑のはだにくりくり目玉の外観が安っぽい宇宙人のゴム人形ふうでおもしろく、価格も数千円と手ごろなため、つい買ってしまう人も多い。ただし生後3~4年で全長150㎝ぐらいになり、最大200㎝をこすことは知っておくべし。飼うなら心してのぞもう。
知能が高く、トイレや飼い主の顔も覚え、自分の名前など、人のことばも少しは聞き分ける。だがそこに思わぬ落とし穴が!! なまじっか頭がよいばかりに、繁殖期のオスは飼い主を恋愛対象にして飛び付いてきたり、逆に恋敵だと思ってかみついてきたりと非常にめんどうくさい。なにしろ動物界で1、2を争うするどい歯の持ち主。しかも垂直に立った木の幹をやすやすと登っていけるほどかぎづめも強大だ。
生後2年目にははば60㎝の水槽では入らなくなり、より大きな水槽や、園芸用の温室、もしくは中型犬用のおりなどに引っこしせざるをえなくなる。
スキンシップで信用を勝ち取り、夢の室内放し飼い
水槽やおりに閉じこめている状態だと一生なれてくれないので、手からえさをあたえたり、適度にいじくってやるなど、人間に敵意がないことをスキンシップで理解させるのも大事だ。
いっそ室内に放し飼いするのもよい。ねこのように人と同じ空間で暮らすことで、おたがいなかまであることを理解していくのだ。ただし断じて外へは逃さないよう、戸じまりは厳重に。熱帯産の動物ゆえ、保温も必要なことは言うまでもない。
そして放し飼いの場合、いくら慣れた個体でも、前に書いたように繁殖期のオスは人にちょっかいを出してくることが多い。こうした緊急時や、家を留守にするときには、収容してトラブルを防げるよう、大きな水槽やおりはそのまま残しておこう。
えさは見た目が命!? 生け花とえさの意外な関係
養殖ではなく天然物イグアナなどには、もとの植物の形を保ったものが、しかも縦に置かれていないとえさと認めないがんこものもいる。
そんなときは生け花の要領で、いろいろな植物を小さなはちにさしてみると、ウソのように平らげてくれることもある。
覚悟をもって怪獣を手に入れるべし!
イグアナの寿命は十数年(最長29年)と長く、犬ねこをきちんと飼うのと同等の責任感と手間をかけられない人には、とうていおすすめできない。
でも、そのぐらいの覚悟があれば飼える「怪獣」がこの世に実在するって、なんかすごくないですか!!
【グリーンイグアナのいきものデータ】
<は虫類>
分類……有鱗類(ゆうりんるい)・イグアナ類
大きさ…全長140~200㎝
分布……中央~南アメリカ
分布域はメキシコからアルゼンチンと、イグアナのなかでも最も広い。ほかのイグアナと比べてもかたくなな草食で、葉野菜や野草、樹木の葉、果実、豆、花、海苔などを好む。
著者/富田京一
1966年福島県生まれ。肉食爬虫類研究所代表。は虫類・恐竜研究家として、国内各地で開催されている恐竜展に学術協力者として参加。『そうだったのか! 初耳恐竜学』(小学館)が好評発売中!
『ヘンな動物といっしょ』
イラスト/コハラアキコ
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