軽キャンピングカーで、世界半周中の放浪夫婦です。
稚内からサハリン島へ渡り、シベリアの大地を爆走。モンゴルで道草したのち、中央アジアに突入しました。南アフリカの喜望峰を目指す、無期限無軌道ドライブです。
ガイドブックにない隠れ家的パワースポットや絶景・奇景を見つけ出しては、「マイ秘境」と呼んで喜んでいます。
独裁国家の入門編
シベリアの森を突き抜け、ソ連崩壊まで外国人は入れなかった閉鎖都市オムスクへ。さらに西へ進み、中央アジアへ入ります。
1国目は、カザフスタン。
憲法で大統領の3選は禁止されているのに、いつまでたっても大統領が辞めない独裁国家です。このあと、中央アジアの北朝鮮と呼ばれる恐怖のウズベキスタン、続いて謎だらけで閉鎖的なトルクメニスタンと控えているので、独裁国家の入門編として、軽く揉まれてきます。
ビザなしで15日間滞在できますが(現在は30日間に延長)、面積は日本の7倍。縦断するだけで精一杯です。
暖房のある宿がない
完全に冬。車中泊したら、凍死しかねません。宿を探したもののどこも暖房がなく、どうせ寒い思いをするならと、ガソリンスタンドの横で寝ます。車の下から強烈な冷気が上がってくるので、脱いだ服で隙間を埋めます。独裁国家で半野宿。いいんですかね?
逮捕と寒さに震えた、初夜です。
賄賂の要求は、拍手級の名演技
翌朝の気温は0度。
平原を貫く辛気臭い一本道で、警察官に「ちょっとこっち来い」と呼ばれました。Yukoを車に残し、殺風景な部屋に連れ込まれます。拷問が似合いそうな、The取調室。取り囲む数人の警察官。
「日本のお金は、イエンと言うのか?」
「ダー(はい:露語)」
「アメリカはドル、ヨーロッパはユーロ、ロシアはルーブル、中国は元。そして日本はイエン」
「ダー」
「わたしは、いろいろな国のお金を集めている」
やおら警察官は上着をめくり、内ポケットにナニかを入れる仕草をします。そして、ちょいと澄ましたしたり顔。
おお、もしかしてこれは賄賂の要求?
無理のないストーリーに、拍手級の名演技です。けれど、おひねりを包む気にはなれません。
空の財布が効きます
対する我輩は、ぜんぜん意味がわからないという役作りで対抗します。
意味がわからないの、君? 頭悪いんだね、もう一度言うよ、とばかりに先ほどの会話が3回繰り返されます。
空の財布を開いて見せたら、マジかよ~と、がっかりする警察官。
じゃ、もう帰っていいわと追い出されたのですが、隣の部屋の警察官に呼ばれました。
The取調室「第2弾」
警察官がスマホを差し出します。アプリのGoogle翻訳に「保険証を出しなさい(英語)」とありました。
スマホをお借りて返事を打ちます「持っていません」
それはけしからんとばかりにスマホを連打し「罰金を払いなさい」
申し訳ないですと神妙な顔して「お金はありません」
熱い交渉が静かに繰りかえされましたが、警察官の脈絡のないひと言で終わりました。
「日本人が好きです」
握手を交わして、無罪放免。
魔法の言葉「お金がない」
その10分後、また警察官に捕まります。
「保険がないなら、罰金ね」
くどくどと説教をされた気がしますが、お金がないと謝ると無罪。
貧乏人に優しい道路交通法ということは、強制保険ではなさそうです。
今夜の野宿は、幹線道路の駐車場(無料)。中央アジアの冬は、軽自動車には厳しいです。
日本人が設計した首都
首都アスタナの都市設計は、建築家の黒川紀章氏。新しい街です。奇抜なデザインのビルが並びますが、設計に施工が追いついていない雑な仕上がりが多々。黒川先生、草葉の陰で泣いているんじゃないですかね。
世界中の宗教を集めて調和させるピラミッド。高さ62メートル。建築費87億4,000万テンゲ(37億2,000万円)。
大統領の名前を冠したナショナルライブラリー。天然資源が豊富なので、頑張って使わないと国家予算が余るようです。そんなビルがいっぱい。