東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチ、新富士バーナーが燃焼機構の開発を担当!
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    2020.01.27

    東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチ、新富士バーナーが燃焼機構の開発を担当!

    東京2020オリンピックの聖火リレーまであと2カ月!

    コースとともに、走者、その土地の文化や歴史をうかがえる演出が発表されはじめた。自分の町にはいつ来るのか、どこに見に行こうか、そして、自分ははたして走者に選ばれるのか……と心待ちにしている人も多いだろう。
    走る人も観る人も、キャンプ好きであれば聖火リレーをより楽しむために「聖火リレートーチ」に注目したい。

    すでに発表されているとおり、東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチは、デザイナー・吉岡徳仁さんによる桜モチーフ。上から見ると花びらとなる5つの筒から炎が上がり、上部で集ってひとつの美しい炎となる。桜の花びららしいスリットのおかげで、聖火リレートーチの中で輝く炎も確認できるという、これまでにない美しい炎でリレーするというから楽しみだ。
    また、走っているときはもちろん、一番の見どころとなる炎のバトンタッチ(トーチキス)を考え、聖火リレートーチを斜めにした時の美しさもデザインしたという。

    この聖火リレートーチ、企画・デザインは吉岡さんだが、素材はLIXIL、トーチ筐体はUACJ押出加工、燃料・燃料ボンベはENEOSグローブ、そして燃焼機構にキャンプ用ランタンやバーナーで知られる新富士バーナーが担当。5社の技術と知恵、情熱があってこそ生まれた聖火リレートーチなのだ。

    燃焼機構の開発を担当した新富士バーナー、山本宏さん。
    「これまで工業用、キャンプ用のバーナーやトーチ、ランタンを作ってきました。正直、日の目を見ない製品もありますが、今回の聖火リレートーチではそうした製品の技術も役に立っています」

    自分の持っているバーナーやランタンとの共通点は?

    今回、特別に燃焼実験の様子を撮影させてもらい、既存のバーナーやランタンとの共通点を教えてもらった。

    <共通点1> 触媒燃焼

    聖火リレートーチは中心部が明るく輝き、周辺から炎が立ち上っていることがわかる。じつは東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチは3つの燃焼を利用している。中央は青い炎の「予混合燃焼」と炎のでない「触媒燃焼」、周辺は赤い炎が立ち上る「拡散燃焼」だ。

    プラチナ(白金)の表面で発生する触媒燃焼は、木炭や線香などで見られる表面燃焼のひとつで、炎は出ない。少しくらい風が吹いても雨が当たっても立ち消えることはなく、安定した燃焼が特徴だ。キャンプ好きなら、たき火の熾火やプラチナを用いたランタンと言えば、その燃焼にピンとくるだろう。
    もう一方の拡散燃焼はいわゆる赤い炎。美しく立ち上る炎だが、風にはめっぽう弱い。

    中央にプラチナメッシュのドームが見られる。ここで触媒燃焼が行われ、万一、周囲の炎が風や雨で消えそうになっても触媒燃焼は続いており、聖火リレートーチ内で常に光り輝く。リレー中に風が落ち着けば、プラチナのドームからまた炎が立ち上るというわけ。

    <共通点2> マイクロレギュレーター

    写真は聖火リレートーチ燃焼機構のカットモデル。
    黒いホースが拡散燃焼(赤い炎)用の燃料を運ぶ経路、下にあるコの字の細いパイプが予混合燃焼(青い炎)と触媒燃焼用のための保炎用の経路。ひとつの燃料ボンベから2つの経路に分かれているのがおもしろい。
    中央付近に見られる大きな穴は予混合燃焼(青い炎)用の空気取り入れ口で、キャンプ用バーナーで用いられるモノとほぼ同じ。
    また、写真中央右側にスプリングが搭載されていることがわかる。これが登山用のバーナーでおなじみのマイクロレギュレーターの部品の一部だ。
    聖火リレーは雪が舞う冬の東北から真夏の東京まで、その気温差は40℃。使用温度域が異なる2モデルを用意するのではなく、同一の聖火リレートーチで対応するには登山用バーナーで培ったマイクロレギュレーターの技術は不可欠なのだ。

    <共通点3> 下向き使用

    *試験用のトーチを使用しています

    走者は聖火リレートーチを掲げて持つが、うっかり下向きにしてしまうことだって十分考えられる。一般的なバーナーは逆さまにすると生ガスが噴出するので逆さま使用は厳禁だ。しかし、東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチは、下向きにしてもすぐさま生ガスが噴出しないよう設計。これもキャンプ用バーナーに搭載している技術のおかげ。

    聖火リレートーチは3つの燃焼をもつ

    <特徴1> 赤い炎

    写真一番右が、燃料ボンベを取り付けた燃焼部。
    写真ではわかりづらいが、聖火リレートーチの筐体は花びらを模した筒が5つ連なっているので、燃料ボンベがギリギリ入るサイズだ。しかも、筐体はつなぎ目がなく、筐体の下から取りこまれる空気はごくわずか。保炎のために必要な予混合燃焼(青い炎)と触媒燃焼に必要な空気となる。
    その名の通り、予混合燃焼はあらかじめガスと空気を混合させることで燃焼する高温で青い炎。青い炎でプラチナ(白金)を加熱して、その表面で触媒燃焼を発生させる。この2つの燃焼が赤い炎の保炎となっているという。

    <特徴2> 燃焼部の部品は約70点

    東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチは、各社が責任を持って作成した筐体、燃料ボンベが、燃焼部を作っている新富士バーナーのもとに集結。これを組み立てるのも新富士バーナーの役割だ。聖火リレーのグランドスタートまであと2カ月に迫った今、組み立ては佳境を迎えている。
    燃焼部の部品は、キャンプ用バーナーが約50個に対し、聖火リレートーチは燃焼部が2つなので70もの部品を組み立てる。

    コンパクトな筐体におさめる燃焼部だから、すべてが小さい。これを人の手でひとつひとつくみ上げる。

    <特徴3> 専用工具、専用治具で組み立て

    設計通りに組み立てられるよう、治具も一から作成している。
    写真は燃焼部を筐体に固定するための治具と工具。燃焼部を仮入れした筐体を所定の位置に置き、写真左側にあるレバーでねじ込む。すると内部のワッシャーが開き、突っ張り棒のようになって燃焼部が固定されるという。押し出し加工で継ぎ目のない筐体に、ネジなしで固定するためのアイデアだ。

    <共通点4> 燃焼部の全品検査

    水に沈めて漏れがないか、また、小さな火をかざして火花が出ないかを目視で確認することで、トラブルを防止する。
    聖火リレートーチの生産数は1万本以上。ほかのキャンプ用バーナー同様、全品検査だ。

    こうして各社の技術を詰め込んだ聖火リレートーチは、雨でも風でも寒冷地でも消えにくい炎を生み出した。
    その試験用トーチを使った実験の様子を記した動画がこちら。

    <気温試験>
    マイクロレギュレーターを搭載することで、外気温0~40℃で一定の炎(35〜40cm)を生む。

    <耐雨試験>

    こちらは耐雨実験。雨粒が触媒燃焼に当たってもはじけ飛ぶ様子がわかる。

    <耐風試験>

    歩くことすら難しい風速17mでも炎が消えることはない。風で炎が見えにくくなると、触媒燃焼のおかげで筐体内部が光り輝く様子がスリットからうかがえる。

    どんな天候でも、どこからでも聖火を楽しめる東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレートーチ。自分が持っているバーナーやランタンと共通の技術が搭載されていると思うと、聖火リレー観戦がいっそう待ち遠しくなる!

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