アルコールとアウトドアのとても良い関係、それがアルコールストーブです
アルコール、とは言っても飲みものではなく、アルコールストーブで使う、燃料用アルコールの話。
ホームセンターやドラッグストアでも買える燃料用アルコール。エチルアルコール(エタノール)とメチルアルコール(メタノール)の組み合わせで出来た燃料用アルコールは、出力カロリーが高く、コーヒーサイフォンやアウトドアでの野外料理に向いている。
そんな燃料用アルコールを使用するのがアルコールストーブ(アルスト、アルコールバーナーとも)で、最大のメリットは燃料が軽いこと。必要な量だけ持ち運べるため、持っていく荷物が限られた山登りなどで重宝する。また、燃料が比較的手に入りやすいのも特徴だ。飛行機での移動で燃料を現地調達しなくてはならないようなシチュエーションでも便利。登山者やバックパッカー、ウルトラライトな人々が好んで使うのもうなずける。
構造がシンプルなので、壊れにくいのもうれしい。長く使ううちにゴムの部分が経年劣化して、移動中に燃料が漏れてしまうようであれば、ゴム部分の交換も可能だ(オプション品を販売しているメーカーによる)。
アルコールストーブはコッヘルやクッカーを使った湯沸かしはもちろん、調理にだって向いている。変わらぬ安定した火力をキープすることができるので、炊飯(ごはん)だってお手のもの。ごはんが炊ける分の燃料だけ燃料ボトルに小分けにすれば、「長く炊き過ぎたー(焦げすぎたよトホホ…)」という長時間燃焼による失敗もない。結果的に効率の良い燃費効果が得られる、というわけ。
使い方はとても簡単だが、実際の使用シーンでは風よけの風防(風ぼう・ウインドスクリーン)を用意したり、シェラカップ、ケトルなどの調理器具を載せる五徳(ゴトク)を別途準備したりすることも。ただ、本体がなければ始まらない。
ここでは老舗メーカー、新興ブランドの人気アイテムをずらりピックアップ。メーカーごとにヨーロッパ・日本・アメリカで分類してみた。世界のアルコールストーブを見比べつつ、気になるものを見つけてみよう。
ヨーロッパのアルコールストーブ
トランギア、エスビットに代表されるヨーロッパのアルコールストーブブランド。ロングセラーの背景には、変わらぬ安心感がある。
トランギア / trangia
トランギア アルコールバーナー
TRB25
1925年創立。スウェーデンの老舗ブランド「トランギア(Trangia)」。そのトランギアを代表する製品が「トランギア アルコールストーブ」で、長く人々に愛されている。真鍮でできたこの製品は。使い込むほどに味わい深い雰囲気が増す。アルコールタンク2/3ほどの燃料で、約25分間の燃焼が可能。純正の五徳(ゴトク)やクッカーセットなど、オプション品も豊富だ。
サイズ:75mm×45mm。重量:110g
エスビット / Esbit
エスビット アルコールバーナー
ESAB300BR0
ドイツのブランド「エスビット(Esbit)」が手掛けるアルコールストーブ。エスビットと言えば固形燃料と、その固形燃料を置くポケットストーブが有名だが、「エスビット アルコールバーナー」も人気が高い。材質は真鍮製。火力調整&消火用の蓋にはハンドルが付いており、安全に使用することができる。
サイズ:74mm×46mm。重量:92g
日本のアルコールストーブ
革新的なアイデアと、確かな技術力で世界を牽引してきたエバニュー。「軽量で強度の高い」チタンと「熱効率が高くて調理のしやすい」アルミを得意とする。
エバニュー / EVERNEW
チタンアルコールストーブ
EBY254
1923年創立。日本を代表する老舗ブランド「エバニュー(EVERNEW)」。このアルコールストーブはチタン製だ(ステンレス製もあり)。サイズは一般的な71mm×42mmに対し、重さはわずか34gと軽量。また、炎孔が二段構えになっているのも特徴的だ。タンク容量は70mm。ストーブの内側には30mlと60mlの目盛付き。
アメリカのアルコールストーブ
新たなブランドが新しい製品を生み出す国、アメリカ。同国のチャレンジスピリッツはモノ作りにも根付いている。
ソロストーブ / Solostove
ソロアルコールバーナー
アメリカの新興ブランド「ソロストーブ(SOLO STOVE)」。米・クラウドファンディングサイト、Kickstarter(キックスターター)で一躍有名になったメーカーだ。ソロストーブの代表製品は二次燃焼系の焚き火台だが、アルコールストーブも手掛けている。構造や形状はとてもベーシック。ハンドル付きの蓋がうれしい。
サイズ:74mm×46mm。重量:100g
バーゴ / VARGO
トライアドマルチフューエルストーブ
T-305
アメリカのアウトドアブランド「バーゴ(VARGO)」が手掛ける「トライアドマルチフューエルストーブ」。最大の特徴は五徳付きなこと。五徳を別途用意することなく、コッヘルやケトルが載せられるのがうれしい(五徳を忘れがちな人には助かるはず)。
サイズは86mm×27mm。重量は30gのチタン製。タンク容量は44ml。コンパクトな設計が重量の削減に直結している。
バーゴ / VARGO
チタニウムコンバーターストーブ T-307
T-307
バーゴのチタン製アルコールバーナー「チタニウムコンバーターストーブ」。「トライアドマルチフューエルストーブ」同様に五徳付きだが、こちらは取り外すことができる。同社の人気ネイチャーストーブ「ヘキサゴンウッドストーブ」に組み合わせて使用することも可能だ。
サイズ:61mm×22mm。重量:39g。
バーゴ / VARGO
チタニウム デカゴンストーブ
T-302
独特の形状をしたバーゴの「チタニウム デカゴンストーブ」。裾の広がりは底面に安定感をもたらし、上面には五徳機能を果たす凹凸付き。炎孔が側面に付いていることも相まって、別途五徳を用意することなく、そのままコッヘルやクッカーなどが置ける。
サイズ:57mm×32mm。重量:34g。
シンプルな構造ながら、日々、新しい製品が生まれる。それがアルコールストーブ
コーヒーや料理はもちろん、ちょっとした暖房効果もあるアルコールストーブ。ここで紹介した以外にも空き缶で自作する人や、ガレージブランドからも多くのアルコールストーブが生まれている。軽量化を突き詰めたものや、ジェット孔構造を持つもの。炎がトルネードのようになるものなど、アルコールストーブは奥が深い。
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トランギア/アルコールバーナー「TR-B25」
半世紀以上のロングセラーを誇る、トランギア(Trangia)のアルコールバーナー「TR-B25」。軽量かつ、シンプルな構造で使いやすい。燃料はエチルアルコール・メチルアルコールで、ドラッグストアやホームセンターなどで簡単に入手できるなど、メリットだらけ。
最近ではアウトドアガス缶(OD缶)やカセットボンベガス缶(CB缶)を使ったシングルストーブ(シングルバーナーとも)も軽いものが多く、もちろんそちらも便利。それでも「アルコールバーナーを使いたい!」「アルコールバーナーを知ってほしい!」という愛用者目線から、トランギアの銘品を取り上げて、その素晴らしさを伝えていこう。
1:重さ110g
手のひらサイズのトランギアアルコールバーナーは、重さ110g。UL(ウルトラライト)系のシングルストーブの中には、約50g~70gの製品もあるので、突出して軽いわけではない。本体重量よりも、燃料がアウトドアガス缶・カセットボンベガス缶よりも軽いアルコール燃料なので、その利がとても高いのだ。
2:シンプル&タフな作り
ロングセラー製品だけあって、その作りはとてもシンプル。アルコールを入れたトランギアアルコールバーナーに火をつけることで、バーナー全体の温度が上昇。ストーブ側面の穴から気化したアルコールが噴出し、炎が安定し出す。構造がとても単純なので、故障することなく長く使えるのもうれしい。
3:燃料が手に入りやすい
アルコールバーナーを使う人がよく言う「燃料が手に入りやすい」という話。それがよく分かるのが遠方へ登山しに行くとき。飛行機ではアルコール燃料はもちろん、ガス缶もNG。現地で調達することになるが、アウトドアガス缶は手に入りにくく、カセットボンベガス缶はコンビニなどで手に入るが缶そのものが嵩張る。
アルコール燃料はドラッグストアやホームセンターで購入でき、必要な分だけ入れ替えて山登りに持って行けばOKと、重さの調節が効く。
4:燃料のコスパが非常に高い
タンクの中に2/3ほどアルコールを注入することで、約25分燃焼する。使い切らなくてもタンク用ふたをしっかり閉めておけば液体が漏れることはない。「約25分だけ使う」と割り切れば予備の燃料は不要と、さらに荷物が減る。
5:オプションパーツが豊富
オプションパーツの中で、とくに便利なのがゴトク。写真はトランギア純正「トライアングルグリッドⅡ型」で、3つのプレートを組み合わせて使用する。コッヘル(クッカー)やシェラカップ、ケトルなどを置いても安定するので、あるに越したことはない。
重量は58g。プレートは重ねて収納すれば、ザックの中で場所を取らない。また、この形状は簡易的な風防の役目も果たす。
知っておくべき:火傷には注意しよう
これら要素だけで十分! と思う内容だが、デメリットもある。まず、火力の調整が難しいこと。消火用&火力調整用ふたのスライド扉で火力の調整が行なえるが、それなりに慣れが必要。ひねるだけで火力調整ができるシングルストーブに比べて手間がかかる。また、火傷しやすいのも事実。真鍮製のアルコールバーナーは本体そのものが熱く、直接触れると間違いなく火傷する。ここは知っておこう。
構成/早坂 英之
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