皆さんはロープを持ってますか?
テントやタープをお持ちの方は専用の細いロープがあると思いますが、トレッキングを趣味にしている方でもロープを持っている方は少ないでしょう。僕自身もロープをリュックに入れるようになったのは山を登り始めて数年してからでした。なぜ持っていなかったかというと、皆さん同様、メリットを知らなかったからです。
キッカケは、台風直後に土砂崩れで登山道が崩壊していてどうにも下山できず登り返すしかなかった、という悔しい思いをした経験からです。あの時、ちょっとしたロープがあれば計画通り下山して温泉に浸かって帰れたはずでした。(結果的に登り返して大幅に時間と体力をロスしてしまいましたが、安全優先で正しい判断ではありました)
ロープワークでできること
ではロープワークのメリットとは、どのようなことでしょうか。
(1)危険箇所の手がかりにできる
足場が悪い箇所や急傾斜地、濡れた岩場を下るときやトラバース(横移動)する際には、丈夫な立ち木にロープを回して「荷重を預けながら降りる」「滑落を最小限で止める」ことができます。難所を登る時でも、一人が先行して通過できれば、後続のメンバーにロープを投げてやれば楽に登れるので、グループで登山する場合はリーダーがロープは持っておくと良いでしょう。
(2)荷物の受け渡しに使える
グループ登山中に事故が発生した際に、「仲間に道具を渡す」「仲間の荷物を引き上げる」ということができます。単独でも、空身で危険箇所を通過した後に「荷物を引き上げる」ということもできます。
(3)遭難者の救助ができる
ここで言う救助は完璧な救助ではなく、「できる限りの」部分的救助(セルフレスキュー)です。ロープがあれば、遭難者に対して出来ることが広がります。(もちろん、ロープがなくても危険がなければ手当てや通報はできます)
しかし、滑落して急な斜面や足場の悪い箇所を越えなければならない場合は、ロープを使って「降下して手当てをする(登り返して通報に行く)」「道具を渡して遭難者を安全に登り返させる」「救急道具や食料、防寒着を渡す」ということができます。また、川でも遭難者にロープを投げて「岸に引き寄せる」ということも可能になります。溺れた子どもをとっさに助けにいくときも、冷静に自分をロープで縛っておけば二次遭難は防げるでしょう。
基本的なロープワークを練習しよう
では早速、ロープワークの基本を試してみましょう。
必要なアイテム
・ロープ
・スリング
・カラビナ
(1)ロープ
径7~8㎜、長さ8~15m程度のロープで十分です。クライミング用のダイナミックロープは伸びやすくお勧めしません。また、身体確保に適さないものもあります。多くのメーカーを扱う登山用品店で、店員の方と相談しながら購入すると良いでしょう。
(2)スリング
ロープの降下や登攀の際に、円滑かつ安全性を高めるためのテープ状の化学繊維の輪。支点や簡易ハーネス(自分の安全ベルト)を作る際に使います。最低限60㎝×1本、120㎝×3本あると良いでしょう。
(3)カラビナ
ロープとスリングを接続する器具。必ず登山用品店で購入してください。安全環付カラビナ×2枚、環無×2枚あると良いでしょう。
基本ロープワークの「エイトノット」
エイトノットは、ロープワークをする上で基本の結び方になります。
(1)輪っかを作ります
(2)輪っかの下の部分をねじります
(3)下から上の輪っかにロープを通します
(4)上下のロープを引っ張ります
端末は少し長めに出して、抜けないようにします。これが「エイトノット」です。
この結び方がすべての基本のロープワークになるので、しっかり身につけておきましょう。
ダブルエイトノットの作り方
スリングとロープを、カラビナで繋ぐことがあります。荷物の吊り上げ、吊り降ろし作業をするときなどです。その際に、ロープ側にカラビナを引っ掛けるための輪っかを作る必要があります。ダブルエイトノット(フィギュアエイトノットとも呼びます)は、その輪っか部分を作る方法として使えます。
(1)端末を折り返して輪っかを作ります
(2)輪っかの上部(折り返し部分)を端末に見立ててエイトノットを作ります。
(3)折り返し部分を、エイトノットの流れで取り回していきます。
(4)最後に締め上げればダブルエイトノットは完成です。
今回はここまでです。次回にスリングや、その連結の使い方についてお伝えします。