朝農業生活を楽しむ様子をお届けする『雨のちハレ、ときどき農業生活』です。約1200平米の耕作放棄地を借りた友人のお手伝いする形で、リモートワークと並行しながら、100%オーガニックの鎌倉野菜を育てています。
雑草を取り除いたり、ミニ耕運機「こまめ」で土を耕す話だったり、種や苗を植えたりしてきましたが、そろそろ収穫した野菜たちの話でもしようかと思います。今日は「ジャガイモ」です。
万能野菜!ジャガイモ豆知識
ジャガイモの中で日本の2大品種として知られているのが「男爵いも」と「メークイン」です。「キタアカリ」や「インカのめざめ」をスーパーなどで目にした人もいるのでは?煮ても焼いても揚げても茹でても美味しい万能な野菜として食卓に欠かせないものです。
もともとは、南米アンデス山脈が原産。日本には東南アジアを経て16世紀に伝わり、保存性が高く、当時の船乗りたちの食料として重宝されてきた歴史があるとか。農林水産省では「馬鈴薯(ばれいしょ)」と称していて、かつては公的機関を中心に品種改良がなされていたそうです。
ジャガイモの普及企画がペルー政府などによって提案され、国際連合食糧農業機関(FAO)が「ジャガイモ栽培8000年を記念する『国際イモ年』」として2008年、一層の普及と啓発を各国に働きかけることになったそうです。8000年の歴史……、すごい。
あのプロレスラーから着想された新種のジャガイモ
数あるジャガイモの中で、僕たちが栽培したのは、インパクトある見た目をした「デストロイヤー」と呼ばれるもの。新種として登録されたのが2000年で、正式名称は「グランド・ペチカ」。「ペチカ」とはロシア式の暖炉を意味する言葉で「地面(グラウンド)から暖炉(ペチカ)の炎が出ている」と例えられて名付けられたとか。
濃い紫色の皮に、芽の周りだけ濃いピンクに染まる姿が、まるでマスクをかぶっている往年の覆面プロレスラー・デストロイヤーさんに似ているところから命名されたそうで、すっかり「デストロイヤー」として日本では定着しています。
派手な模様に反して味は抜群です。サツマイモと栗を合わせたようなほっこりした優しい甘味とコクがあり、でんぷん質が多く含まれている粘り気と、やや肉質なほくほくした食感ながら煮崩れしにくい特徴から、カレーやシチューといった煮込み料理に最適です。
優等生で革命児!?
病気に強く、耐湿性もあるため、比較的土質を選ばずに栽培できる品種で、光を通さない黒マルチを利用した栽培法であれば、イモが浅い位置に育ったとしても、光が当たらず緑化しにくく、育てやすい特徴があります。
また、貯蔵中の傷みが少ないため、貯蔵に向いた品種でもあり、家庭菜園派の人にも育てることができるため、プランターで栽培する人もいるようです。リング上で大暴れした悪役の名を拝命したにもかかわらず、超優等生なのがこの「デストロイヤー」なのです。
僕たちの畑でもその優等生ぷりを発揮しました。光が当たると起きる”緑化”を防ぐ黒マルチを施した以外は、完全に放ったらかし。耐陰性があるため日陰でも栽培可能で、無農薬でも病害虫被害を受けずに収穫できるため「園芸革命をおこすジャガイモ」とも呼ばれているそうです。
※注意点もあります。
ジャガイモ共通の注意点として、芽の部分には毒素が含まれています。芽を取り除かないで食べてしまうと嘔吐や腹痛、下痢やめまいなどの症状が出てしまう恐れがあります。デストロイヤーを調理する場合は、芽をしっかりと取り除いてから使用しましょう。
真夏にシチュー!デストロイヤーを食べてみた
ということで、うんちくばかり並べてしまいましたが、実際に調理をして食べてみました。まずは、煮込み料理の定番「肉じゃが」。
調理時間の短縮に欠かせない圧力鍋を使っても煮崩れしませんでした。砂糖をあまり使わない我が家では、薄味気味になる肉じゃがですが、デストロイヤーの甘味で十分でした。ほくほく感もしっかりあったので、「じゃがバター」にしても美味しいと思います。
そして次は、シチューにしてみました。
どうしてですかね、鍋とかおでんとか、真夏に熱いものを食べたくなる習性がありまして、連日猛暑が続くこの季節に冬の定番「クリームシチュー」です(汗)。夏らしくトウモロコシも加えてみましたけど、ホワイトソースともよく絡み、お好みで塩を少々加えると甘味が増して美味でした!
そのほかに、ローズマリーをふんだんに使ったジャーマンポテトにも最適です。夏のビールのおつまみにもデストロイヤーは大活躍でした。
農作業の唯一の対価は100%オーガニックの鎌倉野菜たちです。自分たちで育てた愛着があるからか、野菜一つひとつの個性が際立ち、甘味をしっかりと感じられる幸せなひとときになります。
まだまだ暑い夏と行動制限された日々が続きますが、リモートワークと並行しながら行なう朝農業が生活に程よいハリをもたらせてくれています。