自転車とリノベーション物件でシャッター商店街がみるみる活性化!若い世代がジワリ増えはじめた”辰野町”ってどこにある?
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    2021.05.20

    自転車とリノベーション物件でシャッター商店街がみるみる活性化!若い世代がジワリ増えはじめた”辰野町”ってどこにある?

    長野県辰野町は、伊那谷の最北部に位置する。田園風景のなかから未舗装の山道に至るまで、変化に富んだ様々な道をサイクリングすることができる。(写真提供/グラバイステーション)

    自転車で町を元気に!

    「ほんとうにサイクリストが増えてきたな」
    とある日曜日。古い商店街にある再生されたビルの3階から一人の男性がそうつぶやいた。眼下には、ロードバイクに乗ったサイクリストが一人。静かに商店街を通り過ぎて行った。

    ここは長野県辰野町、下辰野商店街にある「〇と編集社」という一般社団法人がリノベイトした3階建ての雑居ビル。1階には、この地を訪れるサイクリストのより所となっている「グラバイステーション」が入居する。

    辰野駅から徒歩5分ほど。下辰野商店街にある「グラバイステーション」。この地を訪れるサイクリストの拠点となっている。

    その男性こそが、世界157か国15万5000㎞におよぶ自転車の旅を8年半以上かけて実現した自転車冒険家の小口良平さんだ。小口さんは、隣町の岡谷市生まれ。2016年に帰国したあとも諏訪エリアを中心に、自転車による観光資源の開発や、サイクルスタンドを設置する活動を積極的に行なっている。

    自転車冒険家の小口良平さん。サイクリストの目線で埋もれていた辰野町の魅力を掘り起こし、それを広く一般に伝える活動をしている。左のメッセージは、自転車旅を志す後進に向けた小口さんの言葉。

    サイクリングマップやガイドツアーで楽しむのもあり

    「2018年に辰野町の依頼でサイクリングマップを作りはじめました。コースを設定するために自転車で辰野町を隅々まで走ると、隣町に生まれたのに今まで知らなかった魅力的な景色やルートがたくさんあることに気づきました。辰野は、サイクリストにとってパラダイスのような町だったんです」

    辰野町は、かつてJR中央本線の乗り換え地点として、東京と長野を結ぶ一大拠点として栄えた。しかし、84年にトンネルが開通し岡谷・塩尻間が直結されると、辰野で乗り換える人も減少。やがて商店街も衰退していった。目抜き通りも長らくシャッター商店街と化していた。

    下辰野商店街の様子。昭和レトロな建造物がかつての賑わいを物語る。今、この町のシャッターが徐々に開き始めている。

    自転車で走って観光資源を発掘!

    「観光資源といえば、ホタルぐらい。大きな産業もないので、厳しい状況が続いていたそうです。そんなとき、辰野町を元気にしようと活動をしている『〇と編集社』の皆さまと出会ったんです。彼らは、商店街に残る利用されなくなった商店を自分たちの手で魅力的な物件へとリノベーションしては、入居希望者に渡すような仕事をしていました。丁度、『この町にサイクリストの拠点があったらな』と考えていた時期でした。そこで僕も〇と編集社に加わり、リノベイト物件の1階にグラバイステーションをオープンすることになったんです」

    右奥が〇と編集社・代表理事の赤羽孝太さん。若いスタッフを育てながら、町を元気にする活動を続けている。

    〇と編集社が手掛けた物件。コワーキングスペースや動画用のスタジオ、リモート用の個室なども完備。この地域の若きクリエーターたちのより所となっている。

    グラバイステーションは、2020年6月にオープン。レンタル自転車や近隣のガイドツアーを実施するほか、小口さんが監修したサイクリングマップを入手することもできる。レンタル自転車は、体力に自信がない人でも気軽に周辺散策を楽しめるE-BIKEから、自転車キャンプのツアーにも対応できる最新のグラベルバイクまで多種におよぶ。

    小口さんが監修した周辺のサイクリングマップ。辰野町のみならず、伊那谷や天竜エリアなどの広域マップもある。

    気軽に利用できるE-BIKEや子供車のレンタルもある。

    「今、シャワールームも作っていて、ツアーに参加した人はもちろん、辰野周辺を走った人が立ち寄って、汗を流したり情報を得たりできるようにしています」

    グラバイは自転車ショップではないので、自転車やパーツの販売はしていない。しかし、辰野町や伊那谷でサイクリングをするための情報は、どこよりも豊富に揃っている。名物や、その時期に見るべき風景、名所旧跡など、サイクリング前に立ち寄って気になることをたずねてみるといい。もちろん辰野の魅力をより深く味わいたいなら、ツアーに参加することをすすめる。

    町の変化を実感

    「5年ほど前から『地域おこし協力隊』を積極的に募集し、若い世代の流入を目指してきました。〇と編集社の活動が進むにつれ、徐々に若い世代が町に増えてきたなと感じるようになりました。しかし、最近では自分たちでも把握できないほど、若い世代の移住者が増えてきて、町もほんとうに元気になってきました」とは、辰野町役場の野澤隆生さん。

    再生された商店に数軒のショップが入居する人気店。松本で人気のコーヒーロースターも出店。テイクアウトのコーヒーを飲みながら、町の未来について語り合う皆さま。左から2番目が、役場の野澤さん。

    シャッター商店街に光が灯る

    長らくシャッター商店街だった目抜き通りには、ポツンポツンとではあるが、リノベーションされた物件が営業を開始した。松本で人気のコーヒーロースターや雑貨店も入居。近隣のレストランのフードをいつでも買える販売機や、化学肥料・農薬不使用の野菜を無人で販売するブースも登場し話題となっている。日曜日の朝には、そんな商店街で買い物を楽しむ人たちの姿も目立っていた。

    グラバイの隣にある無人販売エリア。奥は、箕輪町にある有名レストラン「Bistroなゆた」が作った料理を買える自販機。右は、新鮮な農薬不使用の野菜を販売する無人販売所。

    朝採れの野菜を並べにきたのは、辰野町に移住し「ゆがふ農園」を営む山浦泰さん。若い世代が夢を持って辰野に移り住んでいる。じつはこのスタンドでは、QRコード決済もできる。

    「レンタル自転車を使って再生された商店街を自力で散策するのもいいですし、ガイドツアーに参加して、辰野町の自然や文化を体感していただくのもいいと思います。『観光資源がない町』というのは過去の話です。辰野町には、サイクリストの目線で見ると魅力的なシーンがたっぷりあります。走りやすい季節に、ぜひ遊びに来て欲しいです」

    冒頭、小口さんがつぶやいたように、この町に数時間滞在した間だけでも、行きかう何人ものサイクリストの姿を見かけた。

    「以前は、サイクリストなんて皆無でした。皆、表の国道を通り過ぎていたのに、今では、この商店街にわざわざ入ってきて、寄り道するサイクリストがほんとうに増えました。サイクリスト、そして、リノベーション物件と共に、町が再生していく姿をみられることを誇りに思います」

    BE-PAL 6月号でも紹介しています

    小口良平さんの活動については、現在発売中のBE-PAL 6月号『ぼくらにできるSDGs』特集でも紹介しています。合わせてチェックしてください。

    グラバイステーション

    長野県上伊那郡辰野町辰野1704
    https://gravbicycle.com/station/

    グラバイには、E-BIKEから、グラベルバイクやファットバイクのレンタルバイクまで用意されている。アドベンチャー系の自転車を使ったバイクパッキングを楽しめるガイドツアーもある。

    撮影/海上浩幸
    構成/山本修二

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