年末年始の天体観測!大晦日は南天のカノープス、新年は「しぶんぎ座流星群」でおめでとう
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    2020.12.30

    年末年始の天体観測!大晦日は南天のカノープス、新年は「しぶんぎ座流星群」でおめでとう

    私が書きました!
    星空案内人
    廣瀬匠
    天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツから来年の星空と天文現象を解説する『アストロガイド星空年鑑 2021』を発売中。観察のための基礎知識も満載で、これをきっかけに星を眺めた いと思った方にオススメの一冊です!

    2番目に明るい星カノープス、東京からでも見える !?

    冬の星空は1等星が多く、きらびやかです。東京だと南の空に7つもの1等星が集まっているのが見えます。この冬の星座と1等星たちは次回、ご案内するとして、実はもうひとつ、東京からでも見ることができる1等星があります。

    それは、カノープスです。日本からは冬の夜の限られた時間に南の低空にしか見えず、山形県・宮城県より北ではそもそも地平線上に昇りません。そのため知名度も低いのですが、シリウスに次ぐ2番目に明るい恒星です。位置する星座は「りゅうこつ座」といいます。

    りゅうこつ(竜骨)というのは船底の中心を貫いて背骨のように船を支える木材のことです。りゅうこつ座は、ギリシア神話に登場する船「アルゴ号」をかたどった「アルゴ座」という巨大な星座が、近代になってから4つの星座に分割されたうちの1つです。カノープス以外にも明るめの星や星雲などがあって、南半球ではそれなりに存在感がある星座ですが、日本からはカノープスが地平線上に顔を出す程度なのであまり知られていません。

    2020年12月31日23時半に東京から見たカノープスの位置。南の地平線が開けていればぎりぎりで見える。ステラナビゲータで作成。

    南の地平線近くに見えるカノープスは、中国で「南極老人星」とも呼ばれていました。地平線に近いので赤っぽく見えます。それをお酒を飲んで酔っ払った老人に見立て、見えたら長生きするという言い伝えがあったようです。実際は、白っぽい色をしています。 

    この明るくても地味なカノープスが、ちょうど大晦日の夜に、日本でもっとも見やすい位置に回ってくるのですからラッキーです。南の方向が開けた場所であれば、ちょうど除夜の鐘が聞こえるころに、カノープスが見えるかもしれません。見えたら幸先の良い一年?かもしれませんね。これを機会に、南の方角の開けた場所を探してみてはいかがでしょうか。天体観察になにかと重宝します。

     現存しない星座の名を冠した「しぶんぎ座流星群」 

    毎年やってくる流星群はいくつもありますが、3大流星群に数えられるのが、1月のしぶんぎ座流星群、8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群です。

    1月のしぶんぎ座流星群は、毎年、年明け早々に起こる天文現象ということで、天文ファンの間では新年のあいさつのような流星群です。2021年は、1月3日の晩から4日の未明にかけてピークを迎えます。ただ、月が出ているので、観測条件はよくありません。 

    ところで、みなさんは「しぶんぎ座」という星座をご存知でしたか?実は、しぶんぎ座という星座は現存しません。

    まず「しぶんぎ」から説明しましょう。四分儀と書きます。古くは2世紀の有名な天文学者プトレマイオス(トレミー)が紹介している分度器のような機器で、円周の4分の1、すなわち0度~90度までを測れるものでした。もっぱら天体の高度を測定するための器具で、大がかりなものになると「壁面四分儀」といって壁に据え付けたり、壁そのものをくりぬいたりして作られています。

    「しぶんぎ座」のモデルになったのは、18世紀末にフランスの天文学者ラランドが使っていた壁面四分儀です。ラランドはこの四分儀などを使って5万個近い恒星の位置を測定したのですが、そのついでにうしかい座、ヘルクレス座、りゅう座の間の暗い星しかない領域に、自分が愛用した器具の星座を作りました。

    星座の境界線は1928年に決定した。以前しぶんぎ座があった場所はうしかい座、りゅう座、ヘルクレス座の領域だ。ステラナビゲータで作成。

    しぶんぎ座は近代になってから作られた星座なので、特にギリシア神話などと結びついているわけではありません。望遠鏡が使われ始めた時代を象徴する星座とも言えますが、なにしろ暗い星々なので存在感は低かったと言えるでしょう。世界中の天文学者で結成された国際天文学連合は、1922年に全天の星座を88個に定め、1928年にはそれぞれの星座の領域を決定しましたが、しぶんぎ座は選ばれませんでした。星座としてのしぶんぎ座は、ここで消滅したことになります。

    それでも「しぶんぎ座流星群」と名づけられたのは、流星群の放射点が、かつてのしぶんぎ座のテリトリーにあるからです。今はない星座名を冠した天文現象というのは、ちょっと他には見当たりません。その意味では奇特な流星群といえるかもしれません。

    1月3日夜から4日未明にかけてがピーク

    さて、そんなしぶんぎ座流星群の特徴は、毎年コンスタントに出るということ。といっても、観測は少し難しい流星群です。ふつうの流星群はピーク前後で数日、観察できるものが多いのですが、しぶんぎ座流星群はピークの期間が短いことが多いです。年によってはピークの1時間にパパパッ!と出現して終わり、みたいなこともあります。予想しがたいところが、おもしろいところでもありますが。

    1月3日24時(1月4日0時)の東京から見た星空。極大時刻(出現が一番多くなるころ)は3日23時と予想されているので、この前後が見ごろ。ステラナビゲータで作成。

    前述のとおり、今年は近くに月が出ていて、あまり観察に適してはいませんが、2021年初の天文現象として空を見上げてみてはいかがでしょうか。町中では難しいと思いますが、ある程度、暗くて空が開けたところに行けばチャンスが広がります。空のどこに流星が飛ぶかわからないので、肉眼でなるべく広い範囲を見るようにするのがコツです。特別な観測器具はいりません。防寒、感染対策を万全にした上でお楽しみください。新年のグッドラックをお祈ります。

    構成/佐藤恵菜

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