改良メダカの歴史に名を刻むであろう名品種
改良メダカの歴史の中で、永遠にその存在が語り継がれる品種がいるとすれば、それは、前回、紹介させて頂いた楊貴妃メダカhttps://www.bepal.net/play/birdwatching/55117 と、背中線に輝青色のラインを持った、幹之(みゆき)メダカであろう。
上から見た幹之メダカ。「これが日本メダカを元親にしたメダカなのか?」と初めて幹之メダカを見た人には驚かれる美しさを持っている。
幹之メダカが知られるようになったのは、2007年に行なわれた日本メダカ協会主催の第一回めだか品評会でのことであった。愛媛県今治市の菅 高志氏が“背中光強メダカ”として出品されたものが、現在の幹之の先祖である。その“背中光強メダカ”を広島県廿日市にある『めだかの館』が様々な品種に交配、2008 年になり、背中線上に輝青色の輝きを持つメダカが出来上がった。そして、菅さんの娘さんのお名前に因み、“幹之”の品種名が付けられたのである。
この魚が菅 高志氏が“背中光強メダカ”として出品された幹之メダカの元親となったメダカである(写真/めだかの館)
そして、この2個体が2008年にリリースされた幹之メダカである。まだ輝青色は1cmに満たないが、それでも全く新しいメダカとして多くのメダカ愛好家垂涎の的となった。
それまで楊貴妃メダカ、琥珀メダカ、ピュアブラックメダカなどが改良メダカの人気を徐々に高めてきていたのだが、この“幹之”の登場で、改良メダカ人気が大ブレイクしたのである。背中線上の輝青色は、当初は点光、弱光、強光といった分類がされていたのだが、発見から8年前後を経た頃、その輝青色は背中線全体から頭部、そして、吻端に達するまで幹之メダカは多くの人の手によって繁殖、改良されてきたのである。現在は吻端まで体外光が伸びたものを“フルボディ”タイプと呼んでいるが、体全体という訳ではないので、“フルライン”タイプと呼ぶ方が適切かと感じる。
当初から青体色、白体色(厳密にはもう一色肌色体色が含まれる)が出現した幹之メダカ、現在でも青体色だけを選んでも白体色が混ざって出現する不思議なメダカでもある。圧倒的に青幹之メダカの人気が高いが、白幹之メダカにも清涼感のある魅力はある。
非常に高い人気を得ている幹之メダカは、多くの生産者によって繁殖され、現在は手頃な価格で素晴らしい個体をホームセンターなどでも入手できるようになっている。またこの幹之メダカとの交配によって、様々なタイプの新しい表現を見せるメダカが作り出されても来た。それらについては今後、順次、紹介していこうと思うのだが、リリースから11年を経て、様々な改良メダカが紹介されるようになり、この幹之メダカを飼育したことがないという愛好家も増えてきているようである。
幹之メダカが持っていた体外光を他の色柄の多色なメダカに入れていく“体外光”を乗せた新たな品種が人気だが、その改良の基礎となる部分を持っている幹之メダカ、手頃な価格になったからと軽視され、飼育を経験していないことはもったいないし、幹之メダカの飼育、繁殖から得られるものはとても大切である。多くの先人の手によって“フルライン”タイプが入手しやすい価格になった今、最初から5ペア程度を購入出来るのである。是非、この幹之メダカの自家繁殖させた個体の群泳美を楽しんでいただきたい。
写真・文/森 文俊
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