体側の鱗辺の多くにメダカの持つ色素の一つ、虹色素胞のグアニン層が集まり、上見や横見で見ると、その反射光が美しいタイプを“ラメ”と呼んでいる。ラメメダカは、2012年に広島県の和田敏拓氏がラメ幹之(みゆき)メダカとして発表したものが最初で、それ以降、一気に“ラメ”の呼称と、上見、横見ともに美しいラメメダカの人気が広まったのである。
このグアニン層の反射光は、古くからアオメダカやシルバーヒカリメダカ(銀河)などでも体側面に輝く鱗を多く持つものが見られたのだが、そこに着目して、このラメ鱗をより多くしようという狙いで交配を進められたところに和田さんのセンスが見られた。当初は白幹之体色で進められた“ラメ幹之”も、今では青幹之体色でも素晴らしい個体が多く作られるようになった。その後、透明鱗を持つメダカやオーロラ幹之、ブラックリム系統など様々なメダカと交配され、さらにラメ光沢を多く持った個体を交配することで、より鱗のグアニンを反射させ、鱗辺がラメ光沢に輝く“ラメ○○”と呼ばれるメダカたちが誕生したのである。
交配が進み、累代繁殖も進んだことで、体側だけでなく背面にもラメ光沢が輝く鱗が多く存在するようになり、改良品種の人気ツートップ、楊貴妃メダカ、幹之メダカと肩を並べる高い人気を得るまでになっているのである。現在は改良品種の一つの大きなカテゴリーとして広く認知されている。
黒ラメ幹之メダカは、青ラメ幹之メダカがリリースされてから、様々なメダカ愛好家がブラック系の改良品種と交配、黒ラメ幹之を作出されてきた。岡山県美作市にある『静楽庵』が、オーロラ幹之から固定した黒幹之メダカを白ラメ幹之メダカと交配し、黒体色のラメ幹之として2014年春に作出。ラメ光沢を持つ鱗数が増え、光沢の色も多色に変化した。それ以降、ラメメダカのラインアップを充実させてこられた『静楽庵』血統のメダカが、日本の改良メダカ界を引っ張ってきてくれた部分がある。
黒ラメ幹之のラメを茶系統の体色に遺伝させた“琥珀ラメ幹之”、黄金ラメ幹之にラメを増やす目的で黒ラメ幹之を交配。そのF1に“クリアブラウン”表現の個体が数匹得られたものを累代繁殖して固定された“クリアブラウンラメ幹之”、黒ラメ幹之に非透明鱗の黄色素を入れるために、黒ラメ幹之と黄幹之白タイプを交配、そこから出現した“オーロラ黄ラメ幹之”など、魅力的なラメ幹之が続々と誕生し、愛好家を歓喜させてきているのである。
『静楽庵』のホームページは以下の通りである。
http://www.kurauchi.jp
決定的だったのが、朱赤、黒、白の三色の体色に多色のラメが入る“三色ラメ幹之”のリリースであった。「柄、体色を重視するか?」、「ラメ光沢と鱗数を重視するか?」、「柄、体色とラメ両方のバランスを求めるのか?」その方向は飼育者それぞれの好みで追求していく事ができるメダカで、リリース後から多くのメダカ愛好家垂涎の的となっている品種の一つである。
同時にリリースされた、三色ラメ幹之から出てくる黒ブチが入らない個体から作出した、紅白柄の体色にラメ鱗を持った魅力的な品種が“紅白ラメ幹之”である。日本人なら紅白体色のメダカは錦鯉、金魚などでも好まれるものだが、改良メダカの世界でも、やはり多くの人を魅了しているのである。
今では、改良メダカの様々な品種に、ラメメダカを交配して、ラメ鱗を持つメダカのバラエティも増えてきており、さらにラメメダカ飼育が楽しさをあげている。
ラメメダカの繁殖を今春から楽しまれるなら、種親として、やはりなるべくラメ光沢を持つ鱗が多い個体を選ぶことである。繁殖そのものは、他のメダカ同様なので、しっかりと水換えによって水質管理をして、メダカたちが健康でいられるように給餌を一日に二回は行なうようにしたい。ラメ鱗は遺伝しやすいので、春に交配を始めたなら、今秋には、オリジナルのラメメダカを手に出来る可能性は大いにある。
春の陽射しを浴びてキラキラと輝くラメメダカが持つ美しい姿を是非、多くの方々に楽しんでいただきたい。
写真・文/森 文俊