写真好きにはたまらない!「冬の海」で見られる生き物たち
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    2020.11.26

    写真好きにはたまらない!「冬の海」で見られる生き物たち

    私が撮影しました!
    水中カメラマン
    堀口和重
    日本の海を中心に海洋生物やそれに携わる被写体を1年通して撮影。撮影した写真は新聞やダイビング雑誌などのメディアに掲載、セミナーなどのカメライベントなども開催。水中の生き物の面白い姿や、面白い生態を知ってもらいたいと、海と人の関わりをテーマに伝えていきます。

    冬の海が面白い!

    山ではすっかり紅葉も過ぎ、冬物の厚手のコートが必要な季節となった。冬の海と言えば、荒れて岩場に波が打ち寄せて近づけない、なんてイメージもあるかもしれない。しかしスキューバダイビングの愛好家たちは、こんな寒い冬でもいそいそと潜りに出かけている。彼らを引き寄せる冬の海の中は、何が起こっていて、どんな魅力があるのだろうか。

    吐く息も白い、秋から冬の冷え込む朝、海辺を歩くと海から湯気のようなものが立ち上がっている。これは気温が海水温より低い時に見られる現象で、北海道などでは「毛嵐(けあらし)」、気象用語では 蒸気霧と呼ばれる。条件がそろわないと見られないことから、あえるとかなりラッキーな現象だと言えるだろう。海の、地球の体温を感じる瞬間だ。

    「けあらし」海面から湯気が立ち上っている。

    冬に見られる渡り鳥たちの季節到来

    冬鳥の潜水ハンティング

    他の季節には見られない、カンムリカイツブリなどの冬鳥たちが海にやってくるのも冬ならではの楽しみだ。ダイビング中に魚群がざわっと揺れて見上げると、鳥が潜って狩りをしているのに遭遇することもある。

    陸上ではふわふわの羽も、水の中ではペタンと体にはりついているので、陸の姿と違って見えるのも面白い。

    餌のイワシをゲット!

    クリアな海には冬の生き物が集う

    海の中では陸上より 2 か月ほど遅れて水温の変化がある。冬は四季の中で一番水がクリアになる季節だ。フォト派のダイバーたちには、水中写真の出来栄えを左右するこのクリアな水がありがたい。

    キーンとクリアな水だ

    冬の海らしい生き物

    普段は深場から深海に住む生き物も、産卵のなどのためダイバーの眼に触れる水深まであがってくる。冬らしい生き物をご紹介しよう。 

    キアンコウ

    砂地に潜む、大きな口が迫力のキアンコウ。冬の「あんこう鍋」に使われているのこの「キアンコウ」 であることが多い。

    多きな物は2mにも達するキアンコウ

    マトウダイ

    体の真ん中にある黒い丸が「的」のようだからマトウダイ。黒い丸はストレスを感じると現れる模様だ。落ち着いているときは「まと」はこれほどはっきり模様は出ない。

    体の真ん中にある模様がまるで的に見える

    ミズウオ

    深海魚ミズウオも、水温の低い時期に現れる。打ち上げられたミズウオの胃からは、深海に住む生き物 が出てくる事が多く、その個体がつい先ほどまで深海にいたことをイメージさせてくれる。

    ミズウオも冬場、稀に浅場へ上がってくる

    ツノザヤウミウシ

    カラフルで海の宝石と呼ばれるウミウシも、水温が低い時期は増えてくる。 魚ほど速く動かないので、写真も撮りやすくフォト派ダイバーには根強い人気だ。

    写真の個体は2匹が交接している場面

    冬を越せない魚たち

    伊豆の海では夏から秋にかけて、南方種の魚のこどもたちが潮の流れによって運ばれてくる。チョウチョウウオ科などが多く、海水浴でも「こんなところで熱帯魚に出会えるなんて!」、と思わぬトロピカルなお魚との出会いに家族みんながわくわくしてしまう。冬は南の海から長い旅をしてきた南方種のこどもたちにとって厳しい季節だ。じわじわと気温は下がり弱っていく。

    きれいだったひれもボロボロになったヒラニザの幼魚

    ほとんどの南方種は水温に耐えられず死んでしまうことから、死滅回遊魚とよばれている(生物地理学では無効分散とも呼ばれる)。生息域を広げる可能性も秘めた死滅回遊魚たち、越冬できないのは厳しい現実だが、最近伊豆では以前では見られなかったような南方種が越冬し、繁殖していることもある。その話はまた別の機会にとっておこう。

    水温に耐えられなかったトゲチョウチョウウオの幼魚。あどけない顔が痛ましい

    冬の生物の生態

    死んでしまう死滅回遊魚たちがいる一方で、地元の魚とでもいうべき温帯の魚たちのなかには寒い冬に繁殖するものもいる。卵の世話をし、わが身を盾にして必死に卵を守る姿は熱く感動的だ。

    サビハゼの卵保護

    砂地と水底と岩の隙間をのぞくと、小さなハゼがこちらの様子をうかがっている。隙間の天井からぶ ら下がっているピンクの卵を守っているのだ。サビハゼのオスはひれパタパタと仰ぐように卵に水流をかけ、汚れをとったり、かいがいしく世話を焼く。

    岩の間で卵を守るサビハゼ

    クジメの卵保護

    少し海藻の生えている岩の上では、クジメが卵を守っていた。卵は岩肌と海藻などに絡めて産み付けられていて、オスのクジメは卵によりそうように卵を守っている。卵を狙う他の生物が近づくと、泳ぎ回って追い払う。小さいながらも熱い子育てだ。

    クジメのオスが卵を保護している

    産み付けられたクジメの卵は艶があり宝石のようだ。

    まるで宝石

    ヤリイカの産卵

    冷たい冬の夜、潮通しの良い岩の下には、ヤリイカが産卵にやってくる。ヤリイカはクジメやサビハゼと違い卵を守らないが、卵は汚れたり、食べられたりしないのだろうか? ヤリイカの卵はゼラチン質の膜でおおわれていておいしくないようで、魚は卵を狙わないのだ。また、卵は適度な潮の流れで洗われてきれいに保たれる。なんとヤリイカは、潮の流れを利用して子育てしているのだ。

    岩の天井に上手く卵を産み付ける

    海のぬくもりを感じる毛嵐、北の国から南下してきた冬鳥たち、クリアな海、冬にしか見られないウミ ウシや、深海魚、それぞれのやり方で子育てする生き物たち。 冬の海は確かに寒いし冷たいが、この時期ならではの生物・光景であふれている。

    取材協力(順不同)
    大瀬館マリンサービス・ダイビングショップ海遊・SEAZOO MIURA

    取材/海の生物ライター 真木久美子

    海の生物のたちの生活を伝える海の生物ライター。西伊豆大瀬崎のダイビングショップ「大瀬館マリンサービス」の現スタッフ、ダイビングインストラクター。顕微鏡ではなく、実際に潜って自分の眼で見るプランクトンの観察、撮影がライフワーク。ブログ「まいにち大瀬崎」。

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