1991年生まれ。琉球大学農学部を卒業後、ペルーで2年間を過ごす。帰国後、日本流通産業新聞社に記者として入社。2年後に会社を辞めて再び南米へ渡航し、チリのサーモン養殖を取材。「月刊養殖ビジネス(緑書房)」などに寄稿。岐阜県飛騨市在住。個性あふれる地域の方々との交流やマイブーム。カヤックに野営に釣りと、外遊びは何でも好きです。
テンカラとは?
テンカラとは、小昆虫の擬似餌である毛針を用いた、日本に古くからある釣法です。日本の毛針自体は紀元前からあったとされていますが、「テンカラ」の語源や始まりについては諸説あります。ぼくが住んでいる飛騨地方では、明治以前からその名で通っていたようです。昔は「テンカラ師」という職業漁師がいたほどで、現在でも玄人さんは瞬く間に釣果をあげると漁協の方から聞いたこともあります。
そろえる道具
テンカラ釣りに必要な道具は、竿、釣り糸、毛針の3点のみ。このシンプルさが、テンカラの特徴でもあります。ゆえに、釣りをやったことのない方にもおすすめ。考えてみれば、明治以前の日本にそれほど複雑な漁具はなかったでしょう。しかもテンカラは、お金持ちの遊びというより、山村で暮らす人々の釣法だったのですから。
竿
竿の多くは2.7〜4.7mです。使うべき竿の長さは、川の環境次第。渓流の中でも、川幅の広い本流で釣る場合には4m以上、枝葉が川に被さるような渓流では2.7〜3m程度の竿を使います。仕舞った際の寸法が短い「振り出し竿」がほとんどなので、バックパックに忍ばせたり、バイクで気軽に出かけられる点も魅力の一つ。ダイワやシマノといったブランドの竿は1万円を超える場合もありますが、数千円で手に入る竿もたくさんあります。
釣り糸
釣り糸は、ラインとハリスに分かれます。ラインは太く重みがある釣り糸で、「レベルライン」や「ストレートライン」といった種類が一般的。太さは「号」で表され、3〜4号までのラインを使うケースが多いです。蛍光ピンクやオレンジといった目立つ色をしているので、どこに毛針があるのか視認しやすく、この点もテンカラを初心者におすすめしたい理由。釣り糸って、細くて絡まりやすくて、特にぼくのようにせっかちだと、すぐ投げ出したくなります。でも、テンカラではそんなことがありません。
ハリスは毛針とラインを結ぶ透明の糸で、0.8〜1号と細いです。ラインは太いため、そこに毛針を直接結んで投げると、魚もビックリします。そのため、ラインと毛針の間を、無色で細いハリスでつなぐというわけです。ハリスの長さはラインからせいぜい1mなので、ぐちゃぐちゃに絡まることはありません。
毛針
毛針は、虫に似せた擬似餌。大きさにバリエーションがあり、姿形の種類も豊富です。水面に浮くタイプがあれば、沈むタイプもあり、初めての方にとっては複雑かもしれません。浮くタイプであれば、毛針を目掛けて水面下から魚が飛び出すシーンが見られるでしょう。毛針の種類を創意工夫しながら釣りを楽しむのもいいですが、まずはグッとくる「こいつ釣れそうだな!」と感じるものを選んでみましょう。ただ、針は大き過ぎない方が、魚の食い付きがいいかもしれません。
初心者向けおすすめセット
何も考えずにとにかく始めたい!という方向けに、ぼくのおすすめセットを紹介します。
- 竿:テンカラ RT 36/ダイワ
- ライン:レベルラインの3.5号
- ハリス:フロロカーボンの0.8号
- 毛針:グッとくる毛針
すでに竿を持っている方は、patagoniaが販売する「シンプル・フライフィッシング・キット」もおすすめ。ラインや毛針、ガイドブックがセットになっていて、個人的にはめちゃくちゃ気になっています。
テンカラのシーズン
渓流釣りには禁漁期間があり、多くの河川で10月1日から2月末までとなっています。各地域の漁業組合が解禁日を設けており、必然的にテンカラのシーズンは解禁日以降になりますが、どれくらい釣れやすいかはケースバイケース。3月といった水温の低い時期では、原流域をはじめとした小さめの支流で釣果を上げやすい傾向にあるようです。5月は魚の活性も高まり、本流でも釣れる日が多いでしょう。また、魚の活性については組合の方に尋ねてみるという手もあります。
釣れる魚
テンカラのメインターゲットは、ヤマメやイワナといった渓流魚です。川によってはニジマスやブラウントラウトも釣れるでしょう。渓流魚は、流域やその中の支流によっても特徴が違います。身軽なテンカラでさまざまな支流に分け入れば、きっとあなたもその魅力にハマるはず。また、郊外の川でもオイカワやカワムツといった魚が釣れるようです。
テンカラのシーズンは始まったばかり。道具をそろえて、チャンスがあったら竿をバッグパックに入れて出かけてみましょう。次回の記事では、基本的なルールや服装など、テンカラを含めた渓流釣り全般の基本について解説したいと思います。