これが野生の『エノキタケ』だ!スーパーで売っているのとは似ても似つかない堂々たるフォルム!旨い~!
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  • キノコ・山菜

    2018.12.07

    これが野生の『エノキタケ』だ!スーパーで売っているのとは似ても似つかない堂々たるフォルム!旨い~!

    新企画【 ビバ!キノコ・週刊「菌」曜日 】がスタートします!キノコを採って&撮って30年!マッシュ柳澤の知れば知るほど深みはハマる野生菌ワールドへようこそ!

    初冬、高原の沢沿いに発生した野生の『エノキタケ』大きいものでは、カサの径10㎝に達する、堂々としたキノコだ。

    エノキタケは、晩秋から出始め、冬本番の間を経て翌年の早春まで発生が続く、ほとんど採れる物の無い季節に採集できる貴重なキノコだ。色付いていた木々の葉が散りきって寒々とした森の中で、折り重なって生えるエノキタケを見つけると、もの寂しかった風景が急に明るくなったように感じて、なんだか嬉しい。

    嬉しい理由は他にもある。野生のエノキタケは美味いのだ。

    スーパーなどで普通に売られている栽培種と同種なのだが、味は比べるべくもなく野生のエノキタケに軍配が上がる。栽培種と違ってヌメリが強いので、汁物など茹でて使う料理に向いている。特に鍋ものではザクザクと歯切れがよく、しかも濃厚な良い出汁が他の材料の旨みを引き立てる。適度なヌメリも舌触りが良い。第一級の食用キノコだ。ただし柄は固く、消化が良くないので切り除いて調理する必要がある。
    また、赤血球を破壊する有毒タンパク質成分を含むので十分加熱して食べる必要がある。これに関しては栽培品も一緒だ。

    スーパーなど普通に販売される『エノキタケ』は白いのが主流だ。奥は『ブラウンエノキ』とか『原種エノキ』と呼ばれる白色種と野生種の交配種。キノコの形は栽培されたエノキタケとは似ても似つかない。細長くひょろひょろ伸びた栽培品に対して、野生のエノキタケは実に堂々とした貫禄があるキノコだ。

    白エノキはキノコの『もやし』? 違うんです!

    細長い栽培種は、光を当てずに暗い場所で育てたキノコの『もやし』だと思われがちで、図鑑などでもそう書かれていることが多いが、実はそんなことは無い。ちゃんと学校の教室程度の明るさの光を受けて育っている。
    色が白いのは、光に当たっても茶色く成らない白色品種だからだ。もっとも、ずっと昔、まだ白色品種が開発されていなかった頃は、白いエノキタケの方が人気があるという理由で暗所での栽培もあったという。それでも暗所栽培のエノキタケも純白にはならず、うっすらとクリーム色がかっていた。もちろん買った後でも光に当たるとだんだん茶色になっていく。
    栽培品が、ひょろりと細長いのも暗闇で育てたからではない。エノキタケは菌床栽培という方法で生産される。これは栄養になるおが屑や米ぬかを入れたビンで育てる方法だ。栽培品のエノキタケの下から3cmほどのキュっと締まったところがビンの口に当たるところだ。
    エノキタケが発芽(?)してビンの口を出て少し伸びた頃、伸びたキノコがバラバラにならないように、油紙やビニールフィルムでグルッと筒状に巻く。
    これにはもう一つ重要な役割がある。筒の内側はエノキタケの呼吸によって二酸化炭素の濃度が上がる。二酸化炭素濃度が上がるとカサの成長が抑制されて大きく成れず、上へ上へと酸素を求めて伸びていくのだ。これが栽培品のエノキタケが細長くなる理由だ。

    一見モヤシの様に見える弱々しいエノキタケは、実は光に当たってすくすく成長した元気なキノコだったのだ。

    エノキタケは、枯れ木を腐らせ、土に返すキノコの腐朽菌の仲間で、名前の由来となったエノキの他、コナラやヤナギ、ケヤキ、街路樹のポプラなど様々な広葉樹に発生する。町中でも散歩などのおりに、わざわざ探さずとも目にするキノコでもあるのだが、犬のオシッコがかかっていそうで…。つい採る気にはならない。そんな公園や市街地などでも見られる身近なキノコでもある。

    木枯らしが吹く冬の森で、枯れ木に重なり合って生える『エノキタケ』( 食べられるキノコ ※ 注意 ※ 生食は厳禁!中毒の可能性がある、しっかり火を通して食べること。)

    公園で、植栽の切株に発生したエノキタケ。平地ではこのタイプが多い。前日の豪雨で泥だらけ。( 食べられるキノコ ※ 注意 ※ 生食は厳禁!中毒の可能性がある、しっかり火を通して食べること。)

    エノキタケ( 食べられるキノコ )

    ※ 注意 ※ 生食は厳禁!中毒の可能性がある、しっかり火を通して食べること。

    学名:Flammulina velutipes (Curtis) Singer

    寒冷地に多い大型のタイプ。平地に多いタイプは、もっと華奢で肉薄、束になって生える傾向が強い。

    【 カサ 】

    発生したばかりの幼菌では、球形でマッチ棒の頭のような形。成長につれ饅頭形からやがて平らに開く。色は黄土色から褐色。表面には強い粘性があり、湿時周辺に短い条線がある。カサの径は2~10㎝。

    【 柄 】

    上下同大の棍棒上、大型のものでは下方がやや太くなる。表面はビロード状の毛に覆われ、上部淡く下部は暗褐色。軟骨質で硬く、中空。多数、あるいは数本が基部で癒着し束生する。

    【 ヒダ 】

    白色からクリーム色で、湾生から上生しやや疎。

    【 肉 】

    白色で、特別な味は無く、キノコらしい良い香りがある。

    【 環境 】

    様々な広葉樹の枯れ木や切株に発生。

    ※ 注意 ※ 見分けに関して

    環境の影響か、品種なのかは不明だが、全体に白色から、淡いクリーム色の個体も散見する。その場合でもカサの中央部や柄の基部は褐色を帯び濃色で柄はビロード状。

    『エノキタケ』に間違いやすい毒キノコ

    ニガクリタケ( ※ 猛毒 ※ )

    死亡例もある猛毒菌。エノキタケと同じように冬でも発生するので注意が必要。

    学名:Hypholoma fasciculare (Fr.) P. Kumm.

    【 カサ 】

    幼時、半球型。成長すると平らにに開く。硫黄色から淡レモン色。しばしば中央部が赤褐色を帯びる。表面は平滑でやや吸水性。湿った時にも粘性は無い。径1.5~6cm程。

    【 ヒダ 】

    湾生から上生し密。ヒダの色は初め硫黄色のちに緑色を帯びた黄褐色、成熟すると暗紫褐色になる。

    【 柄 】

    束生し、上下同径の棒状または下部がやや細く、中空。表面は繊維状でカサと同色。上部に褐色綿毛状の不完全なツバがあるが、消失しやすく見受けられない個体も少なくない。

    【 肉 】

    強い苦みがあり、淡黄色。しばしば傷つくと赤変性を示す。

    文・写真/柳澤まきよし
    参考文献/「日本のキノコ262」(自著・文一総合出版)

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