世界的な聖地・パワースポット、セドナに住んで23年になる写心家・NANAさんは、セドナの大自然をガイドしながら、住んでいる人だけが触れられる四季折々のセドナの大自然を写真に収めています。6月21日は、夏至。そして新月。セドナの自然に抱かれた家に住んでいるNANAさんは、宇宙や自然の営みをどんなふうに感じているのでしょうか?
――セドナは観光地なのに、夜になると真っ暗になるそうですね。それは何故ですか?
NANA セドナでは、街灯があるのは街中のメインの通りの一部だけで、星がよく見えるように住宅街では街灯も禁止されていて、新月には真っ暗になるんです。
ですから、新月の夜空は、星でいっぱいです。私とパートナーのケニーが住む家からも、天の川が見えます。
私たちは西暦に慣れてしまったけど、もともと日本は太陰暦の月の暦でしたよね。だから28日の月の周期は私たち、日本人にとっては文化のルーツになっているはずです。それは、私たちが宇宙の営みとともに生きてきた証、とも言えると思います。
NANA 本来、女性は新月の周期や満月の周期で月の巡りが来ていました。元々人間も、宇宙のリズムで動いていたんだけど、自然や宇宙の営みと切り離されて、生理不順などの不調が起こってきているんではないでしょうか。
――日本人は、人工的な空間に慣れてしまって、日常的な自然との付き合い方を忘れかけているような気がしますね。
NANA 日本人だけではなくて、世界中、現代的な暮らしをしている私たち、みんなに言えることだと思います。スーパーに行けば、年間を通して、どんな野菜も果物もあって、季節感もなくなっていますしね。でも特に都会に暮らしていると、自然との関わりが薄くなってしまうかもしれませんね。
アメリカのネイティブの人たちも、太陽や月の動きをとても大切にしていました。セドナには、V-V(ヴィ・バー・ヴィ)という岩絵があるのですが、そこには、春分・秋分・夏至・冬至、の他に、4月21日、5月21日にも、特別な場所に光が差し込んできて、種の播き時、収穫期、春の始まりなど、季節の節目を教えてくれます。
NANA 3月21日の春分は、種の準備をする日、4月21日はトウモロコシの種を播く日、5月21日は、2度目のトウモロコシの種を播く日。6月21日は、最後のとうもろこしの種を播く日。というように、夏至のところの岩絵には、雷の絵のところに影が来るんです。その下には渦巻が描いてあって、それは水溜りを表しています。つまり、夏至から雨季の到来が訪れることを告げています。雨季と言っても日本の梅雨のようなものではなくて、モンスーンと呼ばれる季節風がやってきて、スコールみたいな雨になるんです。
――すごいですね。どんな人が暦を刻んだんでしょうか?
NANA ホピ族では、毎日太陽の位置を確認する太陽族が、さまざまな儀式を決めてきたそうです。セドナのこの岩絵の近くには、毎朝、太陽を観察する神官のような、シャーマンと言われるような人たちが、太陽の出る位置を観察していたと思われる丘があって、季節の節目に太陽が昇ってくる位置に、火を炊いた跡が残っているそうです。
V-Vの岩絵の岩の前の地面は、現在は元々の地面より1メートルぐらい高い地層になっています。それは、岩の上から落ちてきた土が堆積したからではないか、と言われています。
岩絵から1.5メートルぐらいの場所を地質学者が掘り起こしてみたら、火を焚いた跡が等間隔にいくつか発見されたんです。その火を焚いたところを境にして、その外側は踏み固めた跡があって、内側は、踏み固められた跡がなかった。
それは何を示しているか、というと、火を炊いた跡の外側では大勢の人がダンスをしたりして踏み固められているけれど、内側は岩絵を描くシャーマンのような、特別に岩絵に近づくことができた限られた人だけが入れたってことなんです。火を焚いたのは、結界だったんですね。
このV-Vの一番大きな岩の壁面には、1030以上の岩絵が描かれています。岩絵は、シャーマンや神官によって、正確な場所に、一つ一つ、意味があって描かれたのでしょう。
――この岩絵は、いつごろ描かれたんですか?
NANA 正確には、描かれている、というより、刻まれているんです。ここの岩絵はペイントされているのではなくて、硬い尖った石をハンマーのような大きな石で叩いて刻まれた物なんです。それを考えると、すごいなあ、と。ペイントするより、正確に描くのはずっと難しいですからね。
ただし、岩絵のシンボル(絵柄)にどんな意味が込められているのか、というのは、本当のところ、わかっていません。研究者によっても意見が分かれているし、今現在のホピ族やその他のネイティブの部族であっても、見る人によって解釈が分かれます。ある程度のシンボルは、確かではないか、というものもありますが、そのほとんどが、もう、私たちの想像に託されているって感じですね。
そして、この岩絵が描かれたのがいつくらいだったのか、ということですが、正確にはわかっていないんです。
この辺に人が住み始めたと言われているのは、1万年くらい前からと言われていますが、この岩絵を描いたのはホピ族の祖先の一部といわれるシナワ族で、彼らがどのくらい前に描いたのか、というのは、正確にはわからないんですよね。
ただわかっているのは、シナワ族は1400年代初頭に、ここら辺から一斉にいなくなってしまった、ということです。ですから、この岩絵が刻まれたのは、15世紀初頭前、ということしか、はっきりしたことは言えないそうです。
NANA 彫られた線が黒ずんでいるのは、刻まれた後で酸化した、ということなので、それだけ時間が経っているということで、その古さがわかります。
岩絵にはシャーマンもたくさん描かれていて、手が大きかったりと、体の一部を強調されていて、岩の割れ目の脇に描かれていることが多いんです。岩の割れ目は、スピリットの出入り口と考えられていて、マサウという精霊が第四世界のスピリットのポータルを守っている様子も描かれています。
――NANAさんは、どうして、この岩絵に惹かれるんですか?
NANA そうですね。この岩絵の前に来ると、古の人々の想いに少しだけ触れられる、からでしょうか。いろんな想像を巡らせられますよね。不思議だと想うこと、現在の私たちには、なんで彼らがこんなことができたのか、と想うこともたくさんあるんです。
ここには、蛇のように見える図柄も描かれているんですが、それは、川の地図ではないかと。航空写真で上から見た川とそっくりなんですよ。あんな昔に、どうやって上空から見たような川の全体像を描けたのか、と想いますよね。そして、何の目的で描いたかは想像するしかないですが、獲物を捕まえやすい場所とか、何か食べられる植物の採れる場所とかを示しているんじゃないか、と言われています。
また、岩絵のある場所からは見えない、サンフランシスコ・ピークスという山を描いた岩絵もあります。それは今でもホピの人たちにとっては、カチーナ(精霊)が棲む霊山で、ホピの言葉では、ヌバトキャオビと言われていて、雪をかぶった山、という意味なんです。V-Vの暦の岩絵の脇には、白っぽい薄い板のような岩が意図的に挟まっていて、ギザギザに削られています。その岩を横にしてみると、その稜線が、実物の稜線とぴったり同じなんです!
NANA 実はそれが判明したのは、この岩絵の研究者が、「なんか、これ、山の稜線みたいだなあ、いったいどこからの景色なんだ」と探した結果、セドナの隣町、グランド・キャニオンに行く途中にあるウパキ遺跡からみた霊山の姿だ、ということがわかったんです!
ですから、彼らはそこから移ってきたんじゃないか、と言われているんです。
でも、そこから移ってきて何か月も経ってから、山の正確な稜線を描けるなんて、すごいと思いませんか?だって、粘土じゃないんですよ。岩を刻むわけですからね。失敗したら終わりじゃないですか。それを想うと、昔のネイティブの人たちは、本当に視覚的記憶力がすごかったんですね。
ネイティブの先人たちはプリミティブに見えるけど、ものすごく正確に岩に暦を刻めたことを考えると、どれだけ自然界とつながっていたのか、と思います。逆に言えば、私たちはどれだけ自然から切り離されているのか、ということでもありますよね。
――ネイティブの人たちには、母なる自然が、自分たちを生かしてくれているという実感があったんですね。
NANA 現代人が考えるような、自然に生かしてもらっている、という感覚とはまた違うものだったんじゃないかな、と想うんですよね。それが当たり前で、それがすべてでしたから。ただ、自然=グレートスピリットへの感謝と畏怖の念は常にあったのではないでしょうか。ネイティブの人たちの遺跡や岩絵を見ると、そのことをひしひしと感じます。
彼らにとっては、種をいつ植えるか、いつ収穫するか、いつ食べられる植物や薬になる植物が出てくるか、などは、命がかかっていることで、死活問題であったでしょうから、この暦はとても大切なものだったのだと考えられますよね。
マヤ文明の遺跡「チチェン・イツァ」のように世界的に有名じゃなくても、セドナのこの岩絵のように、世界中いろんなところにまだまだ知られていない岩絵の暦のようなものがたくさんあるんでしょうね。
それは、古の人々が、宇宙の営みと共に生きてきた、ということだということですよね。
私たちの生命体としてのバイオリズムは、本来は、宇宙の営みに合わせて創られているということ。それがわかると、人間社会だけの視野じゃなく、もっと大きな空間と時間に身を置いているんじゃないかな、と想えます。
女性は特にそのことを、自分の体のリズムをもって感じられると思いますが、月の巡りを疎まず、受け入れれば、自分の体に変化を感じられると思いますよ。
――日本にいる私たちは、どうやって宇宙のリズムと体のリズムのバランスを取ったらいいんでしょう?
NANA 少しでも意識して、月とか星の動きに心を傾けてみてはどうでしょうか?そして季節の節目、節目の自分の心や体のリズムや変化を大切にする。
私は、今日も午後、白く薄い色の半月が出ているのを見て「ああ、もう半月か」と思ったんです。これからどんどん、新月に向かって月が欠けていきます。そして、月がかけていくほどに、星が輝きを増していくんです。
日本からセドナに来て、「天の川を初めて見ました」という人がとても多いです。セドナに来なかったら天の川を見ることがなかったかもしれない、と。私ほ東京生まれですが、子供の頃、長野に行った体験があって、星空の美しさに驚いたことがあります。セドナに住み始めて一番感動したのは、新月の空一面の星でした。
そして、今年の6月21日は、新月と夏至が重なって、しかも、父の日ですよね!
「母なる大地」が地球だとしたら、「父なる天」は宇宙でしょう。宇宙の営みを感じられる新月に、父の日というのは、すごくないですか?
――日本にいると、なかなかそういうことに気づかないですね。満月を意識することはあっても、ふだん、新月はなかなか意識しませんよね。
NANA 夏至も、一年で一番、日が長い日で、夏が来た!という節目の日。そして新月は、やはりNEW BEGINNING(新しい始まり)で、何か自分の志とか新しい目標を設定するにも、すごくいい時期です。
今度の父の日には、新月で夏至!自分のお父さんへの感謝はもちろん、父なる天(宇宙)の営みの中で生かされていることにも感謝しましょう。
自分の体の感覚で宇宙の営みを感じること。
現代の環境では難しいかもしれませんが、ちょっと満月や新月がいつなのか、意識して、夜空を見上げてみてください。日本の都会で天の川を見ることは難しいかもしれないけど、大きな星座なら見ることができるでしょう。
天の営みに心を馳せ、大きな時空の中で生きている自分の命を感じてみてくださいね。
ALL MY RELATIONS
繋がるすべての存在に感謝します。
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◯ NANA プロフィール
東京生まれ。高校卒業後、スウェーデンに渡り、美術学校へ。その後、ストックホルム大学で、スウェーデン語と民族学を学ぶ。帰国後、アメリカ人と結婚し、アメリカ、アリゾナ州セドナに移り住む。セドナの自然を案内しながら、セドナ、そして北アリゾナの自然を撮り続けている。その他、ウエディング写真、ホームページ用写真、記念写真の撮影も行いながら、大自然の美しさを通して、命の尊さを伝えたいと想っている。写心(写真)家・ガイドの他に、誘導瞑想、エネルギーワーク、地元のサイキックなどのセッションの通訳、そして自らもヒューマンデザイン・リーディングというセッションを行う。
NanaさんのHPは、sedonana.com
インスタグラムは、sedonanaworld
YouTubeチャンネルでセドナバーチャルツアーを始めましたhttp://www.youtube.com/channel/UCvc67HqHocC8U3wDxSQkMSQ?sub_confirmation=1
写真/NANA
構成/ 尾崎 靖(エディトリアル・ディレクター)