日本人が見失いかけている「自然観」や「女性性」は、ネイティブの文化から学ぶ。
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    2020.10.16

    日本人が見失いかけている「自然観」や「女性性」は、ネイティブの文化から学ぶ。

    世界的な聖地・パワースポット、セドナに住んで23年になる写心家・NANAさんは、セドナの大自然をガイドしながら、住んでいる人だけが触れられる四季折々のセドナの大自然を写真に収めています。ネイティブ・アメリカンの人たちと懇意にしているNANAさんに、日本人とネイティブの人たちは「自然観」や「女性性」がどう違うのか? 基本的な価値観の違いについて、お伺いしました。

    マザーアースを感じるグランドキャニオンの夕暮れ

    ――日本からセドナにやってくる人は、女性が多いそうですね。

    NANA  そうですね。やはり、セドナは女性に人気のあるパワースポットとして有名だからでしょうか。特にアラフォーの独身女性が多い気がします。そういう女性たちは、今のままの仕事でいいのだろうか、結婚はできるのだろうか、子どもは産めるのだろうか、などの悩みを抱えていて、その答えを求めていたり、運気を変えたい、と想っていらっしゃる方たちが、とても多いと思います。

    自分を見つめ、転機としたいという多くの女性達がセドナを訪れる。

    ――セドナに来れば、運気を変えられるということですか?

    NANA  セドナまで来る決断をして来られた方は、すでにそれだけでも思い切った行動を取っているわけですよね。やはり、まずは、思いついたことを行動に移すのが第一歩、ということじゃないでしょうか? セドナに来る、ということだけでなくても、とにかく、前に一歩踏み出す、ということですよね。

    セドナは良くも悪しくも、自分の中にあるものが浮上してくる場所だと言われています。それは一つに、他にはないような、非日常的な大自然に囲まれて、日本での常識やしがらみから解放されることで、本当に自分がやりたいことや真の自分が感じていることが、表に現れて来るからではないかと思います。
過去の傷や未来への不安も出てくると思いますが、そうなった時、そのことをどう捉えるかによって、運気も変わってくるのではないでしょうか?
それは誰かが変えてくれるんじゃなく、自分で変えるんですよね。

    母なる大地の懐に包まれ、生まれ変わる。

    ――そうは言っても、ずっと変わらずにいた自分を変えるのは、難しいのではないですか?

    
NANA  セドナに来る、ということ自体、大きな決断を実行した、という一例ですが、何か行動を起こしたら、その自分の勇気を褒めてあげて欲しいと思います。自分の価値を自分が認めることが、大切なんです。それが運気を上げる鍵ではないかな、と。

    私は最初に離婚した時に、自分で自分の価値を認めていなかったことに気づいたんです。そこで気持ちを入れ替えたら、本当に人間関係が一変して、ポシティブな方向に向かいました(笑)。

    多くの女性たちが抱えているジレンマは、「社会に認められる女性性」と「人間という種としての女性性」との価値観のギャップを、無意識のうちに感じているからじゃないか、と想うんです。

    
例えば、パートナーを得たい、でも、自由を束縛されるんじゃないか、とか、社会が創り出した価値観の枠の中で、多くの女性たちは、本来の女性性を見失ってしまっているように思えます。

    夏の豪雨が削り取ってできた岩の波。ローアー・アンテロープ・キャニオン。

    ――そうですね。社会的な要請に応えようとして、無理を重ねてしまう女性が多いかもしれませんね。

    NANA  今、私たちのほとんどが、経済を基準とした価値観で生きていますよね。お金になるかならないかが価値の基準、というような。そうなると、お母さんの家事だけじゃなくて、お父さんの力仕事などを含めて、家庭での仕事に価値を見出せなくなってしまうようなことも起きると思います。
昔は、家庭でのお父さんの役割、お母さんの役割、というイメージがありましたけど、そういうイメージを持つことさえ、男女差別みたいな風潮があるような気がします。それが良い悪いということではなくて。

    「女性の時代」と言われて久しいけど、本当の意味での女性性ってどういうことだろう、と思います。

    本来、女性の月のめぐりは月の周期に寄り添っている。

    ――日本でも、「女性性は重要だ」、と言われていると思いますが?

    

NANA   確かに、いろんな分野で女性が活躍する「女性の時代」と言われていますが、今、日本で言われている「女性の時代」は、男性的な社会の価値観に合わせて、男性と同じようなことを女性がやっている、ということで、本来の女性の「女性性」とはちょっと違うんじゃないかな、と想うんです。

    私は、「女性性」を考える上で本当に大切なのは、どれだけ社会に貢献できるかということではなく、本来の女性の力に目覚めることだと思います。それは、古来から女性が持っている力の素晴らしさを思い出すこと。たとえば、赤ちゃんを生み、命を育てることは奇跡的なことですよね。
女性は、赤ちゃんを産んでも産まなくても、そういう創造的なエネルギーを体の中に宿している。それが本来の「女性性」ということだと想います。

    ネイティブの儀式などを通して私が感じてきたことは、本来、女性は神と繋がりやすく、とてもパワフルな存在だ、ということです。本来、女性に月のめぐりがきている時は、とても敏感になって、スピリットの世界とつながりやすく、とてもパワフルな時なんです。

    でも、母系社会から封建社会になって、女性の力が封印されてしまった。そして、生理も汚らわしいもののように扱われて、女性自身もそう信じ込まされました。私は、生理痛とか生理の時の苦痛は、何世代もの間に刻まれてきた記憶を再生させているから起こるんじゃないかな、自然の摂理に逆らって生まれた苦痛なんじゃないかな、と想うんです。

    ――自然に即した女性性は、ネイティブ・アメリカンの文化には残っているんでしょうか?

    NANA    ネイティブ・アメリカンの社会は、基本的に母系社会なので、残っていると想います。たとえば、「ムーンロッジ」というスエットロッジがありますが、それは女性のための浄化の儀式です。伝統的には月の巡りが来ている期間行うというものでしたが、現在では単発的な感じなので、少し形は変わってはいますが。

    昔は、部族でみんなが一緒に暮らしていたので、女性の月の廻りはみんな一緒に来たそうです。女性の生理も月の周期と同期していて、満月や新月の時だったと言われているんです。みんなで親密に暮らしていた女性たちは、一緒に生理が来る時に、4日間ぐらい、食事や子どもの世話は、生理が終わったグランマ(女性の長老)や男性に任せて、女性だけで集まってムーンロッジに参加したそうです。

    グランマは、ロッジを出たり入ったりして、女性たちに、女性としての智恵を与えるお役目になる。その期間中の女性は、ロッジで女性としての話をしたり、感謝を捧げたりして過ごし、グレートスピリットからのメッセージを下ろしたそうです。ご信託、って感じでしょうか。卑弥呼などもそうですよね。男性たちは、その話を聴くのを楽しみにしていたそうですが。

    女性のためのスウェットロッジ・ムーンセレモニー。

    NANA        女性が赤ちゃんを宿している時には、その血は新しい命を育む奇跡のエネルギーですが、ほとんどの時は女性はその血を、母なる大地に生きるすべての命に与えます。また、経血は乾燥させて、メディスン(薬)としても使われたそうです。

    だから、女性の月の廻りは、生命を司どる神聖なものとしてリスペクトをもって受け止められていたんです。それがいつの間にか、汚らわしいものだと思い込まされてしまった。それは、本当の意味での女性のパワーが奪われた時だと想うんです。

今では、その血は、ケミカルなものを使ったもので吸収させて、ゴミ箱に捨てられてしまいます。自分の尊い血にリスペクトが払えなければ、当然、体調が崩れたり、メンタル的にも影響が出たりすると想います。

    ですから、自然に即した女性性というのは、女性がまずは、自分がどれだけ神聖な存在なのかを想い出すことから始まるのではないかな、と想うんです。

    右側の穴は水を張っていたとされる。ここで出産をしたのではないかと言われている洞窟。

    ――日本では、そういう女性のコミュニティは少ないかもしれないですね。

    NANA    日本に限らず、女性の社会進出が女性の権利だと主張されている多くの国で、同じ現象が起きているんじゃないかと想います。「仕事の支障になる」と感じることは、「洗脳されている」と言い換えてもいいかもしれません。それは同時に、男性も女性も、日々の生活に追われて、命への感謝を忘れているからだとも言えるのかもしれません。

    女性が自分の「女性性」を抑圧していれば「犠牲者意識」が生じると思いますが、それは自分では気づかない。気づかない間に、自分の神聖な女性性を犠牲にしていれば、情緒も不安定になるでしょう。多くの女性は、情緒の不安定さは、ホルモンバランスが崩れるせいだ、と思っているかもしれませんが、でも、その大元の理由を考えていないように想います。

    ただ、最近は、オーガニックコットンを使ったナプキンを使う人たちも増えてきて、そういう感覚の人たちのコミュニティができているかもしれないですね。お互いに情報を交換するのもいいと想います。


    初潮を迎えた少女の儀式(右上の人型)と股を広げた出産を表す岩絵(中央の人型二人)。

    ――女性が自分の中の「女性性」に気づけば、社会も変わると想いますか?

    NANA      そうですね。女性だけではなくて、男女ともに、本来の女性性というものの役割に気づくことが大切だと想います。女性が、本来の女性のあるがままの姿で認められる社会であれば、社会全体がコミュニティ的になって、言ってみれば、部族的感覚を取り戻せるかもしれません。

    ネイティブの部族は、今でも母系社会で、婿入り婚です。つまり男性が女性の村に婿入りしてくるんです。子どもは、お母さんの氏族(クラン)を引き継ぐので、家族の中で、氏族が違うのはお父さんだけ、ということになります。

    ホピ族の長老から伺った話では、お父さんには自分の子どもを叱る権限がなくて、子どもが悪さをした時には、お母さん側のおじさんやおじいさんが、子どもを厳しく叱り、しつける役をするそうです。時には体罰を与える時もある。実のお父さんは、その後で子どもを甘やかすのではなく諭す意味で、慰め役になるんだそうです。

    マウンテンゴートの家族。ザイオンにて。

    NANA    面白いエピソードを聞いたことがあります。あるアメリカ人女性のジャーナリストがインタビューで、ホピ族の女性に「あなたたち女性は、部族会議に出ないと聞きましたが、それは不平等だと想いませんか?」と聞いたそうです。そうしたら、その女性は大笑いして「なんでわざわざ、そんなところに行かなきゃならないの?男たちは、家に戻ってから、会議で話し合ったことを私たち女性にお伺いを立てるのよ。だから、そんなところにわざわざ行かなくてもいいの」と。それは男性は、即座に対応する瞬発力には長けているけれど、女性は、七代先の子どもたちの生きる世界を見据えられるような持続力が優っている、ということなんです。

    女性が本来の女性性を認められている部族的社会では、男女がそれぞれの役目を果たして、目の前で起きている問題と長期的な行く末を考慮しての問題を、母なる大地の中で生かされていることを前提に解決していけるのではないでしょうか。

そうなれば、人間関係も、環境問題も、総合的な視点で対処できるような世界に変われるかもしれませんね。

    夕映えの空にヴィーナスのベルトが現れた珊瑚色のブライスキャニオンの夕暮れ。

    
――男性も「女性性」に目覚めれば、部族的社会的なコミュニティを築きやすいということですか?



    NANA     ある意味、そうかもしれません。私たちは、男女問わず、みんな自分の内に「女性性」「男性性」がありますよね。男性性は合理性を求めて便利さを追求するけれど、女性性は、無駄だと思われること、不便なこと、不合理なことも含めて受け止めていく大きな包容力があると想うんです。それがなければ、長期的な展望で環境問題などには取り組めないでしょうし、子育てだってそうだと想います。

    合理性を追求した便利な現代社会、特に都会に身を置いていると、自然から切り離されて、その結果、本来、私たちにあらかじめ備わっている「女性性」や「男性性」という内なる自然が、わからなくなるように思うんです。つまり、森や川のようないわゆる自然から切り離されるだけではなく、「自分という自然」からも切り離されてしまうのではないでしょうか。

    自然の中にいると、大きな命の中で、自分という存在が生かされていると気づきます。私たちひとつひとつの命が、どんなに愛されているかがわかったら、自分の命も人の命も、そして、他の命も大切に思えるようになると想います。いじめだってなくなると想います。

    母なる大地といいますが、本当の意味での女性性に目覚めるということは、女性だけではなく、それによって、すべての人が自分の命に宿る「自然」に目覚めることではないかと想います。

    都会であろうと、自然の中であろうと、見上げる空とのご縁は一期一会。

    ――NANAさんは、写真も、そういう視点で撮っているんですか?

    NANA    大自然の中で写真を撮っていると、私たちが一つの生命体であるのと同じように、母なる大地・マザーアースも、私たちという細胞を宿す、意思をもった一つの生命体なんだ、ということを感じます。そのマザーアースが語りかけてきてくれることを感じ取る、ということでしょうか。

    田舎にいても、都会にいても、空は毎日姿を変えます。天気は天の気と書きますよね。私たちの気分が変わるように、マザーアースの気も変わる。毎日、空を見上げるだけでも、マザーアースとの一期一会のご縁があるんです。写真を撮ることは、その一期一会のご縁を撮らせていただく、という感じでしょうか。


    ――人間の都合ではなく、自然の都合に合わせて撮るわけですね。

    NANA    それしかないですから(笑)。夕日を私の都合で遅らせてもらうことなどできないですからね。先日も久しぶりにグランドキャニオンへ行ったんですが、思ったより駐車場が混んでいて、予定していた場所に夕焼けに間に合わず、別の場所から撮影することになってしまったんです。でも、初めて訪れた場所から見えるマザーアースの姿を捉えることができました。新たな風景との出逢いも一期一会です。その瞬間は、本当に感謝で満たされます。

    グランドキャニオンの夕暮れ。一期一会の新たな風景との出逢いに感謝で満たされる。

    NANA    今、私たち人類は、自然を自分たちの都合で破壊したり、遺伝子組み換えなどで命まで操作するようになってしまいましたよね。遺伝子組み替えなどで早く育つ牛など、そういう効率的な人間の都合ばかりが優先されると、命へのリスペクトも失われて、本来の意味の女性性が失われていくように想います。

    女性原理というのは、生み出すこと、育むということ。男性原理の経済効率や人の都合だけで、自然から搾取してきた結果、地球がどんなふうになっているか、多くの人が気付き始めていると思います。

    女性が、自分の心身ともに女性であることに誇りを持てるような環境になれば、同時に、男性も男性としての誇りを持てる社会になると想います。
男性性と女性性は切り離されていなくて、対になっています。今までは、そのバランスが崩れていました。これまで押し込まれていた女性性を見直すことが、今、人類だけではなく、地球全体として大切なのではないでしょうか。

    ◯ NANA プロフィール                            

    東京生まれ。高校卒業後、スウェーデンに渡り、美術学校へ。その後、ストックホルム大学で、スウェーデン語と民族学を学ぶ。帰国後、アメリカ人と結婚し、アメリカ、アリゾナ州セドナに移り住む。セドナの自然を案内しながら、セドナ、そして北アリゾナの自然を撮り続けている。その他、ウエディング写真、ホームページ用写真、記念写真の撮影も行いながら、大自然の美しさを通して、命の尊さを伝えたいと想っている。写心(写真)家·ガイドの他に、誘導瞑想、エネルギーワーク、地元のサイキックなどのセッションの通訳、そして自らもヒューマンデザイン·リーディングというセッションを行う。

    NanaさんのHPは、sedonana.com 

    写真/NANA


    構成/ 尾崎 靖(エディトリアル・ディレクター)

     

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