旅行作家として多数の著作を持つ吉田友和さんは、これまでに約90カ国もの国々を旅し、今もほぼ毎月海外に出かけている旅の達人。そんな吉田さんが先日、『思い立ったが絶景 世界168名所を旅してわかったリアルベスト』(朝日新書)という本を発売されました。これまでに国内で刊行された「絶景本」の数々を分析した上で吉田さんが提案する旅のかたちについて、お話を伺いました。
——『思い立ったが絶景』をとても楽しく拝読して、最後にあとがきを読んでびっくりしたんですが、当初は「絶景」をテーマにした本ではなかったとか?
吉田友和さん(以下吉田):そんなことをあとがきに書いていいのかとも思ったんですが(笑)、全部正直に白状しておこうかなと。書きはじめた頃は本当に手探りで……結果的にうまく一冊の本にまとまったので、自分でもちょっと驚いていて。
——「絶景」というテーマに辿り着いたきっかけは?
吉田:昔からそういう習慣があるんですが、困った時、僕はとりあえず本屋さんに行くんです。旅の本のコーナーに行ってみたら……何となくわかってはいたんですけど、いわゆる「絶景本」が、ものすごくたくさんありました。それらを全部まとめ買いして、内容を比較してデータを取ったら面白いんじゃないかなと思いついたんです。これだけ数が多いなら、そこからデータを取る意味もあるんじゃないかと。
——23冊の絶景本に掲載されていた絶景スポットは、合計で670カ所。結構重複していたということですね。それらを紹介冊数の多い順にランキングしていくと、1位は同率で3カ所。そのうちの一つがボリビアのウユニ塩湖ですね。
吉田:ウユニ塩湖が1位というのは、当初の予想通りでしたね。
——確かに、雨季に湖の表面が鏡のようになるウユニ塩湖は、メディアで何度も取り上げられて有名になりました。同率1位の他の2カ所については本で見ていただくこととして、670カ所のうち、吉田さん自身が訪れたことのあるスポットは……。
吉田:本のサブタイトルにもしましたが、168カ所です。
——それもすごい数ですね!
吉田:たぶん、旅が好きであちこち行ってる人は、もっと多いと思うんです。2、300カ所という人もいますから。ただ、こうした絶景本の中には、旅仲間と話していても全然名前の出てこないスポットもたくさん入っていたんです。僕が聞いたこともない場所も結構ありましたね。そういうスポットは、一般的な旅行ではあまり立ち寄らない自然の険しいところで。絶景というくくりで、景色のいい場所を紹介しているんです。旅行先として人気かどうかではなく、絶景として美しいかどうか。
——なるほど、絶景本ならではの特徴ですね。
吉田:あくまで本の中で完結していて、楽しみ方としては写真集に近いですね。中には、旅好きの人が作ったんだろうなという、実際にその場所に行くための方法を紹介するガイド部分の充実した本もありましたけど。
——これだけ紹介するスポットが多いと、絶景本を制作する側の人たちも、さすがに全部の場所を実際に訪れているわけではないですよね。写真もストックフォトから借りたものを使う場合が多いでしょうし。
吉田:それは僕からとやかく言えることではないですけどね。実際にその土地に行かないで本を作っても別にいいと思うし、それでたくさん売れる本を作れたなら、それはその人の才能だと思います。僕自身、裏方というか編集者でもあるので、そこはかとなく作り手目線で見ちゃうんですが、絶景本でもちゃんと丁寧に作られている本はリスペクトできますね。それも主観ですから、確たることは言えませんけど。やっぱりわかりますよね、この本はすごく気合を入れて作ってるなあとか。
——吉田さん自身が旅の本を作る時に心がけていることは?
吉田:自分の本を作る時のポリシーとしては、自分で撮っていない写真はなるべく使わないようにしていますし、情報も伝聞であれば誰から聞いたかを必ずはっきりさせて、自分自身の発言と明確に分けるようにしています。自分が知らないことをさも知っているかのように書くことはしないように心がけています。