極北に生息する地上最大の肉食動物、シロクマ。日本でもほとんどの人が子供の頃からその存在を知っている動物ですが、野生のシロクマを実際に目にしたことのある人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
そうした野生のシロクマが、年に一度、たくさん集まってくる町があります。カナダのマニトバ州、ハドソン湾の南西にある小さな町、チャーチル。この土地に毎年のように通い続け、2015年10月に最新作『HUG! today』を上梓されたばかりの写真家、丹葉暁弥さんに、野生のシロクマとチャーチルの魅力についてお話を伺いました。
――丹葉さんがシロクマを撮るようになったきっかけは何ですか?
丹葉暁弥さん(以下丹葉):もともと動物が好きで、シロクマに興味があった、ただそれだけなんですよね。写真を撮りたいというより、彼らがどんな生活をしているのかを自分の目で見てみたかったんです。そう思いはじめたのは今から20年近く前になりますが、当時はインターネットも発達してなかったので、どこに行けばシロクマに逢えるのか、情報が全然ありませんでした。旅行会社にかたっぱしから連絡しても、どこも何も知らなくて。そんな時、ニフティサーブの旅行フォーラムに書き込みをしたら、そうした旅行の手配をしている旅行会社があると教えてくれた人がいたんです。すぐにその会社に電話をかけて相談して、1998年の秋、初めてチャーチルに行きました。
――チャーチルでの初めての滞在は、どんな旅になりましたか?
丹葉:チャーチルは当時から欧米人観光客の間では有名な場所で、連泊するのも難しくて、最初の年は3泊しかできませんでした。シロクマが現れる時期もよくわからずに行ったので、タイミングもちょっと早すぎたんですよ。だから、のべ20頭も逢えなかったんですよね。
――それでも、そんなにシロクマに逢えたんですね! 初めて目にしたシロクマの印象はどうでしたか?
丹葉:不思議な感じでしたね。町からバギーツアーの出発地点まで車で移動していた時、その道端を、普通にシロクマが歩いていたんです。それまで思い描いていたのは雪の中にシロクマがいるイメージだったんですけど、まったく雪のないところで、道路脇をシロクマが歩いていて。でも、やっぱり感動しました。本当にいるんだなあと。