日本全国のゲストハウスを訪ね、その土地おすすめのお店とアウトドアスポット・アクティビティを紹介していただく連載が始まりました。
第1回目となる今回伺ったのは、長野県長野市にある「1166バックパッカーズ」です。オーナーである飯室織絵さんにおすすめいただいたお店も、ご紹介します!
観光の拠点に抜群な、ホスピタリティのあふれるゲストハウス
1166バックパッカーズは、長野駅から徒歩15分、善光寺本堂までは徒歩10分。門前と呼ばれるエリアに位置していて、観光とまち歩きにもってこいの立地です。さらに、善光寺の北側にある地附山の登山口まで徒歩で1時間以内。観光とアウトドアを両方楽しみたい! と思う人には、おすすめです。
それに加えて、スタッフの方々は気さくであたたか。他のゲストと程よく交流できる規模と建物の雰囲気もあり、旅の通過点とするだけではもったいないのです。日がな一日ぶらぶらと過ごすことを目的に滞在したくなるほど、気持ちよく過ごせるゲストハウスです。
オーナーの飯室織絵さんが、1166バックパッカーズを開いたのは、2010年。ゲストハウスが日本国内で広がる前のことです。
「海外を旅したバックパッカーの経験がゲストハウスオープンのきっかけになりました。ゲストハウスには、国籍を問わずさまざまな人が集まります。それぞれの人生を歩んでいる人たちが意見交換し、身の上話などをしているのがとても素敵に感じて。日本でもそういう場をつくりたい、とゲストハウスをオープンさせました」
1166バックパッカーズは、元クリーニング屋の一軒家。入り口をくぐると、そこがレセプション兼ラウンジです。ラウンジの中心にある大きなテーブルにゲストが集います。「お久しぶりです、お元気でしたか?」と常連さんが再会を喜び合う姿や、「周辺に面白い場所ありますか?」と一見さんが常連さんに訪ねる姿も見られることもしばしば。和気あいあいとした交流が生まれています。
宿泊室は、個室と男女混合ドミトリー、女性専用のドミトリーの3種類があります。ドミトリーのベッドにはカーテンがついているので、プライバシーも保たれます。ラウンジの片隅にはソファがあるので、コーヒーを片手に静かに過ごすのも◎。交流したいときや一人で過ごしたいとき、そのときどきの気分に合わせた過ごし方ができるのです。
ここでは、ゲストがあつまって朝ごはんを食べる「みんなで朝ごはん」や映画の上映会、門前町に移住したい人におすすめの「移住よもやま話」など、さまざまなイベントが行われています。スタッフがイベントのホストを務めることも。例えば、パティシエやパン職人などの経験がある溝川真由美さんは、週一でベーグルを販売しています。ベーグルはもちろん、自分で焼いたもの。
「自家製酵母を起こすところからつくっています。長野は、フルーツの宝庫。特にリンゴやブドウは種類がとても多くて、しかも他の地域よりも手に入れやすいんです。シャインマスカットなどちょっと高めのフルーツでも酵母を起こしてみたり……。いろいろ試して楽しんでいます」
溝川さんは、滋賀県出身。地元で、アウトドアショップの店員を務めていたこともあります。その頃、長野によく遊びに来ていたそう。
「登山にはまったのは、友人につれられて富士山に登ったのがきっかけでした。山で飲んだコーヒーのおいしさが忘れられず、山によく登るようになったんです笑。アウトドアショップで働き始めたのも、山にどっぷり浸かりたいと思ったからです」
溝川さんにとって、長野の魅力は、パノラマで山並みを見られること。長野市を取り囲む山並みは、ゲストハウスの前からも望めます。朝早くに眺める山並みは、峰が輝いて神々しいもの。善光寺ではお朝事も見られるので、門前町での早起きは、一石二鳥です。
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1166バックパッカーズ
〒380-0842 長野県長野市西町1048
TEL:026-217-2816
MAIL:info@1166bp.com
HP:http://1166bp.com/
古民家をリノベーションした、アウトドアセレクトショップ
「NATURAL ACNCHORS」は、アウトドアセレクトショップです。築70年のレトロな外観がとてもかわいらしく、窓ごしに見える店内のウェアが、建物に彩りを添えています。
店主は戸谷悠さん。大学時代にロッククライミングを始め、卒業後もプロを目指してクライミングしていましたが、10年程前に長野で会社員として働くことに。
会社員になってもロッククライミングは趣味として続けていたもの、常々「いつか山に関わるお店を持ちたい」と考えていた戸山さん。2014年の4月に辞表を出して、ついにお店をオープンさせました。
「クライミングの道具は専門的すぎるので置いていないんですけどね。テント、寝袋からスニーカー、ウェア類まで、ひと通りのアウトドアギアからタウンユースできる商品なども扱っています。商品のうち7割が海外まで行き独自に仕入れたので、日本未発売のものもあります」
梁までにもウェアがディスプレイされていて、取扱数の多さに圧倒されます。日本では扱っていないギアもあるので、「なかなか気に入るギアが見つからないんだよね」という人は、ここで運命の出会いが待っているかもしれません。
お店があるのは、住宅地のなか。1166バックパッカーズからは、大通りを通り過ぎて曲がりくねった道に入り、どんどん奥へ進んでいくと到着します。なぜここにお店を構えたのでしょうか。
「探してでも来たいと思ってもらえるほど、このお店を好きになってほしいな、と思っています。基本的な道具を揃えているのは、個人でやっている山道具屋さんが長野市界隈になくなってしまったから。お店を始めた当初から、人と情報が集まるお店にしたいと考えています」
現在、登山はもちろんのこと、トレイルランニング、ロッククライミング、マウンテンバイクなどの自転車や冬にはスキー、ボードなど、いろいろなジャンルのアウトドアを楽しむ人たちが店を訪れているそうです。
そんな戸谷さんは、空いた時間を見つけては、ロッククライミングを楽しんだり、冬には友達やお客さんとスキーにでかけたりしています。
また、「soto class」というアウトドアイベントも主催。春から夏の間に、数回の講座を開催しています。講師は全員が門前町の人。山や湖畔などでテント張り、野外調理、コーヒーの抽出などを教わる内容で、アウトドアの楽しみ方のエッセンスがつまっています。
「初心者にも外遊びを楽しんでもらうための導入として企画しました。山に興味があるけど、何をしたらよいのかな、と思っている人が山に親しむきっかけになってほしいですね」
“外遊び”を中心に、人と情報があつまるお店。店主の戸谷さんもとっても気さくに接してくれます。ふらっと訪れてみてはいかがでしょうか。
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NATURAL ACNCHORS
〒380-0855 長野市長野岩石町251-8
TEL:026-217-8512
営業時間:12:00〜18:30
定休日:月曜日、第2・4火曜日(祝日の場合は翌営業日)
HP:http://naturalanchors.com/
自家焙煎の豆を販売する、地域のコーヒー豆屋さん
1166バックパッカーズでは、コーヒー好きなゲストに必ず紹介しているお店があります。それは、元スタッフの川下康太さんが営んでいる「ヤマとカワ珈琲店」です。
1166バックパッカーズからヤマとカワ珈琲店までは、歩いて10分ほど。細い小道から少し奥まったところにあります。
引き戸をあけると、香ばしいコーヒーの匂いとともにカウンターが現れます。古民家をリノベーションしたため、店内はほどよくエイジングされた木調で、暖かな照明もあってかホッとする雰囲気。カウンターの下には、川下さんが自家焙煎したコーヒー豆とドリップパック、リキッドコーヒーのパックが並びます。
「2年前までは喫茶スペースも設けていましたが、焙煎に集中するために、今は豆の販売店として商売しています。豆は間口の狭い商品ですが、リキッドコーヒーやドリップバック、ギフト商品、オリジナル商品と幅広い形のコーヒーを取り揃えることで、立ち寄りやすい店を目指しています」
リキッドコーヒーには、オリジナルブレンドの豆を使用。ドリップパックも同様にオリジナルブレンドの豆を使っていますが、ボディが効いた豆と酸味の強い豆、デカフェの3種類で展開しています。
“ヤマとカワ”という覚えやすい店名は、川下さんの登山好きに由来しているそうです。
「名前に『山』や『マウンテン』などが入っているお店を見かけると、『もしかして店主の方は、山が好きなのかな』と気になる癖があります。なので、自分の店にも『ヤマ』という単語を入れれば、山好きな人があつまってくれるのでは、と考えました」
「カワ」は川下さんの名字から。とても覚えやすい、と近所の人にも評判です。
川下さんは、門前町エリアで大活躍しています。アウトドアイベントの「soto class」では、第三回「そとで珈琲を淹れてみる」の講師を担当。善光寺境内で4月から11月の毎月第2土曜日に開催されている「びんずる市」にも出店しています。
お客さんは地域の人が大多数。閉店時間の日没頃には、ご近所さんから「まだ開いてる?」と連絡が来ることもあるそうです。今年から、お菓子の製造もはじめるのだとか。珈琲店ヤマとカワの活躍に、今後も目が離せません!
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ヤマとカワ珈琲店
〒380-0815 長野県長野市鶴賀田町2252
TEL:080-9283-9609
MAIL:kissayamatokawa@gmail.com
営業時間:13時~日没
定休日:水曜日、木曜日
HP:https://yamatokawa.com/
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次回は、1166バックパッカーズの飯室さんに紹介していただいた、広島市のゲストハウス「88 house hiroshima」にお邪魔します。
構成:松本麻美 ※この記事に掲載されている情報は、取材当時のものです。