4月からスタートする、星のや富士のツアーを体験してきました
全国各地にリゾートホテルを展開する星野リゾートが、2015年に日本で初めて開業したグランピング施設、星のや富士。6ヘクタールにおよぶ広い傾斜地に、異なったタイプのキャビンと自然の中でゆっくり過ごせるクラウドテラスが、宿泊者を癒してくれます。
トレッキングや早朝カヌーといった自然を使ったアクティビティが豊富に揃っているのも、魅力の一つ。この度、4月1日から5月末まで新しいアクティビティが行われます。しかも、空、湖、そして森の中と多角的な視点から青木ヶ原樹海を観て、触れて、学べる贅沢なツアー! 今回は、そんなツアーをひと足先に体験し、内容や見どころを紹介します。
奥深い世界! 自然の営みが観られる青木ヶ原樹海とは
「千古の苔を宿した人跡未踏の原始密林である」と、小説家・松本清張氏の人気推理小説『黒い樹海』と紹介するとおり、西湖の東側に広がる青木ヶ原樹海は人の手が付けられていないそのままの原生林が生い茂っています。
平安時代の684年に富士山の大噴火(貞観大噴火)が起き、周辺がマグマで埋め尽くされました。2年後にようやく落ち着き、マグマが固まり溶岩になってから約1200年の年月をかけて、溶岩表面に苔が生まれ、雨や風で松やヒノキがこの地に芽生え、今にいたります。
総面積は約30平方キロメートル。樹海という名前は、上から森林を眺めた際に、風が吹くとまるで木が海のように波打って見えることが名付けられたそうです。
今回、星のや富士がこのプランを企画したのは、名前の由来となった波打った姿を上空から観てもらい、湖から樹海の断面図を見て歴史を知ってもらい、そして森の中へ入って実際の樹海の中身を知ってもらいたい思いが詰まっていると広報の担当者が語っていました。
単に本やネットの情報だけで樹海を知ってもらうだけでは、現代の情報社会ではすぐに忘れ去られてしまい、記憶に残らないと危惧しています。観光だけでなく、樹海の歴史や魅力をしっかりと目に焼き付けてもらい、環境保護の観点や観光スポットの観点などを身につけていただくことを願っているそうです。
それでは、早速ディスカバー樹海ツアーを見ていきましょう!
【1日目】グランピング施設で心ゆくまで癒される
今回のツアーは2泊3日のプログラム構成になっており、チェックインをするためにまずはレセプションと呼ばれる建物を目指します。都心から車で向かう場合、東京方面であれば河口湖I.C.を降り、下道に乗って20分ほどで到着。ちなみに、同ツアーに参加できる人数は1組2名のみの、完全プライベートな豪華イベントです!
ここで宿泊の荷物をスタッフに預けて、自家用車をレセプションの駐車場に停め、専用のRVカーに乗って宿泊施設へ向かいます。レセプションについたときから気持ちをグランピングモードにしてもらい、アウトドアを全身で感じてもらいたい狙いがあるそうです。
星のや富士の宿泊施設はすべてキャビン型で、カップルで過ごしてもらうタイプから家族で楽しんでもらうタイプ、開放的な広いタイプ、そして薪ストーブが置かれた贅沢なタイプの4種類を用意。どのキャビンからも、桜や紅葉など四季折々の植物が見られます。
また、スタッフは全員グランピングマスターとして、宿泊者へアドバイスやサポートをしてくれます。
食事はメインダイニング、フォレストキッチン、キャビンと各場所で食べることが可能。おすすめはタープの下で食事するフォレストキッチンで、今回は鹿肉を燻製して赤ワインで煮込んだ肉料理や、ダッチオーブンを直火で煮込んだスープなどが登場。国産スパークリングワインやワイン、日本酒のマリアージュを味わいながら食べられるコース料理は格別! 非日常的な体験が楽しめます。
【2日目】ヘリクルーズとカヌー体験で樹海を観察
2日目は、朝9:30からアクティビティがスタートします。まずはヘリコプターを使ったヘリクルーズ。会場まではあらかじめ手配されたタクシーに乗って向かい、実際に飛んで上から樹海を観察します。ヘリコプターを飛ばすには、エンジンをかけてローターを回転させ、揚力を生む行程が必要のため少し時間がかかりますが、準備ができたらすぐに離陸。さて、テイクオフです!
この日は天候・気候ともに恵まれ、富士山と湖、そして青木ヶ原樹海がとてもきれいに観られました。周辺の山々は木が枯れて褐色になっていますが、樹海は比較的グリーンが多く残り、取材した2月でも美しい風景が広がっていました。
また興味深いのは、富士山の周辺にはほぼ山はなく平地が広がっていること、また湖と樹海の境目はギザギザになっていること。前者は平安時代の大噴火のときに大量のマグマが流れ込み、多くを飲み込んで平らに固まったのではと考えられ、後者はマグマが湖に入って冷却され、流れこむ途中の状態で固まったためこうなったのでは、と考えられます。と、こんな妄想を抱きながら様々な発見があるのは、上からじっくりと観察できるからでしょう。
ヘリクルーズは20分少々で、取材時もあっという間に時間が過ぎ去ってしまいました。周遊を終えたら元の場所へ戻り、そこから車で西湖へ移動してカヌー体験をします。
西湖は、富士五湖の中でもっとも観光化が進んでおらず自然が多く残る静かなエリアで、樹海をゆっくり観察するには絶好のポイント。同ツアーでは星のや富士らしいサービスで、専門ガイドが参加者のカヌーを牽引して目的の場所まで運んでくれます。ちなみに、西湖は溶岩に吸収されなかった雨や雪解け水がそのまま流れて溜まったため誕生したと言われています。
カヌーに乗って5分ほどすると、ゴツゴツした岩場の場所に到着。岩の下半分は白くなっているのがわかりますね。これは雨などで水かさがあがり、岩の中間部まで水面が上がったことを指すそうです。
また、上半分は黒くなっていますが、実は樹海の地面はマグマが固まった溶岩でできています。つまり、平安時代から現在までの約1200年の間、溶岩の上で木々などの植物が育っているんです。言葉や文章だけで知ると「へえ〜」で終わってしまいますが、直に見ると「こんなにはっきりした地層になっているのか!」と強い印象を覚えます。
西湖の最南部まで着いたら、樹海と湖、そして緑を観ながらアペリティフタイムを満喫。アペリティフとは食前酒を指し、夕食前にいただくことで食欲増進になることを目的に海外では提供されています。
ツアーでは施設が用意してくれた軽食と、ジャパンウイスキーをジンジャエールで割ったハイボールが提供されます。軽食も鹿肉のリエットを使ったサンドイッチや、ドライフルーツを使ったスイーツが食べられます。ガイドによる樹海の歴史や豆知識を教えてくれるので、話も弾み、樹海への理解が深まります。
カヌー体験の所要時間は1時間ほど。これを終えたら宿へ戻り、この日のプログラムは終了です。
【3日目】早朝の樹海トレッキングで森の中から観察
最終日は早朝6:20からスタート。施設から西湖を通り、そして青木ヶ原樹海へ向かいます。2日目で樹海の全体像と構造、歴史を知ったので、ここでは実際に中に入って樹海に生息する植物の営みを見学します。
樹海には多くの火山洞が点在。有名なのは鳴沢氷穴や富岳風穴ですが、どれも平安時代の大噴火が起きてから誕生したもの。今では修行の場所や観光スポットとして毎年多くの人が訪れます。ガイドからいろんな説明を受けながら、竜宮洞穴へ向かってトレッキングスタート!
洞穴へ向かう途中には、樹海の様々な風景が見られます。たとえば、露出した木々の根。これは溶岩に根が下ろせず、横へ伸びることで起きる現象だそうです。また、地面のあちこちに生えたての松の木があり、樹海が安定して緑に覆われる仕組みがわかります。
洞穴には凍った雪があちこちにあり、太陽が入らず溶けるほど気温が上がらないことが想像できます。奥へ進むと、地上よりかなり寒いことを体験。4月なら多少和らぎそうですが、2月はかなり冷えていました。それも自然の営みを肌で感じられるいい機会。内部にも苔が多く生えており、普段目にする風景とは異なった生命力の強さを感じました。
樹海トレッキングの所要時間は1時間半弱。洞穴周辺でゆっくりするもよし、竜宮洞穴とは反対側の樹海へ行って別の風景を堪能するもよし、自由に散策できます。この後はホテルへ戻り、全プログラムは終了です。
空き時間に行ってもらいたいクラウドテラス
最後に、星のや富士へ行ったら、絶対に行っておきたい場所を紹介。それがクラウドテラスと呼ばれるウッドデッキです。こちらは朝から夜までオープンしており、自然の中でアクティビティやワークショップなどができます。
ここでは朝にグランピングマスターが淹れる森の珈琲店が登場し、自然の空気を含みながら美味しいコーヒーが飲めます。昼下がりには森のひとときというイベントが開催され、スキレットでバウムクーヘンに香ばしい焼き目をつけて好みのトッピングをし、ドリンクと一緒におやつで優雅なひと時を。さらに夜には森の演奏会が開かれ、地元の演奏家の音楽が聞けるのも魅力。
ディスカバー樹海ツアーは、「上質なアウトドア体験」にこだわる星のや富士だからこそ実現した究極の社会科見学。他の人と違った体験をしたい、もしくはミステリアスな樹海について深く知りたい人は、ぜひ星のや富士に宿泊して、同ツアーに参加してみてはいかがでしょうか。
※悪天候の場合は、内容を一部変更もしくは中止する可能性があります
「ディスカバー樹海ツアー」概要
期間:4月1日(水)〜5月31日(日)
料金:1名12万円(税・サービス料別、宿泊代別)
予約:公式サイトにて1ヶ月前までに
施設情報
星のや富士
山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
TEL:0570-073-066(星のや総合予約)
客室数:40室
チェックイン:15:00/チェックアウト:12:00
URL:https://hoshinoya.com/fuji/
文・撮影/小川迪裕