琵琶湖の固有種・イワトコナマズの料理を食べた!蒲焼きも旨いが最高なのは…
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    2025.03.15

    琵琶湖の固有種・イワトコナマズの料理を食べた!蒲焼きも旨いが最高なのは…

    琵琶湖の固有種・イワトコナマズの料理を食べた!蒲焼きも旨いが最高なのは…
    40年来のイワトコナマズへの思いを専門研究者に伝えると、ついに2024年、湖東の料理店に入荷したとの報せが届いた! 黄褐色の斑紋がある独特な姿を見学し、刺身、蒲焼の順に食すと、脂分が少なくコリコリの歯応えのうえ豊かな甘み。

    白身魚本来の味は「これだ!」という感じ。それでも、湯本貴和さんが最高だと思いいたったのは「じゅんじゅん」の味。琵琶湖湖岸に伝わる伝統的な鍋料理であった。

    専門研究者にイワトコナマズへの思いを伝えた

    滋賀県立琵琶湖博物館に展示されているイワトコナマズ。

    40年来、幻だったイワトコナマズ(Silurus lithophilus)である。座して待っていても決して口に入ることはないと悟ったわたしは、滋賀県立琵琶湖博物館の専門家を頼ることにした。金尾滋史氏と川瀬成吾氏である。

    おふたりとも琵琶湖の淡水魚に関するプロフェッショナルである。琵琶湖博物館の水族展示にもイワトコナマズがあり、金尾氏は湖魚の料理に関する展示も担当されている。

    川瀬氏は2024年に『琵琶湖の魚類図鑑』(サンライズ社)を共編で出版された淡水魚の系統分類学者である。おふたりが付き合いのある料理店にイワトコナマズが入ったら教えていただけるようにお願いすることにした。

    イワトコナマズは2つの漁法で獲る

    1961年に友田淑郎博士によってビワコオオナマズ(S. biwaensis)とともに新種記載されたイワトコナマズは、ナマズ(S. asotus)に比べて茶褐色がかった色で、黄褐色の斑紋が体全体にある。

    友田淑郎博士が新種記載論文の翌年に放った「び わ 湖 産 魚 類 の 研 究―I. び わ 湖 産3種 の ナ マ ズ の 形 態 の 比 較 およびその生活との関連」(『魚類学雑誌』8巻5/6号1962に収録)。a ビワコオオナマズ、b イワトコナマズ、c ナマズ。

    ナマズやビワコオオナマズと違って腹部にも色がついているのが特徴だ。色彩の変異が大きく、あまり斑紋のない個体や、黒・茶褐色の色素が欠落した個体、黄色と黒色がまだらになっている個体などがいる。

    琵琶湖の南部や浅いところにも生息しているナマズやビワコオオナマズと異なって、イワトコナマズは琵琶湖北湖の水深がある岩礁地帯で生活しているらしい。

    6月中旬から下旬、沖寄りの水深23mの礫底域で産卵する。産卵期の接岸する時期には魞(えり)漁で、深場に生息する時期には延縄(はえなわ)漁で漁獲する。

    念願かなって入荷の報せがが届いた!

    まな板の上のイワトコナマズ。近江八幡市の「ひさご寿し」にて(以下同じ)。

    年の暮れも押し詰まった202412月、イワトコナマズが入荷したという待ちに待った連絡が入った。指定された近江八幡市の「ひさご寿し」に向かう。

    店主の川西豪志氏は近江八幡市のご出身で、琵琶湖の食材を使った独創的な料理を滋賀の文化とともに発信されている。今回は無理を申し上げて厨房でイワトコナマズを捌くところから見学させていただく。

    まずは刺身と蒲焼で豊かな甘みに酔いしれた

    3枚に下ろされたイワトコナマズ。脂肪層は鮮やかなオレンジ色だ。

    イワトコナマズの小骨を抜いていく。

    まな板に置かれたイワトコナマズは体長約60cm。手慣れた料理人の手で3枚に下ろされる。脂肪層は鮮やかなオレンジ色で、餌となった甲殻類由来のカロテノイドの蓄積らしい。肋骨を漉いたあとに硬い小骨が残るので、毛抜きで1本1本丁寧に抜いていく。

    イワトコナマズの刺身。シコシコとした噛みごたえと、経験したことのない独特の甘み。

    さて、いよいよ夢にまでみたイワトコナマズの実食である。まず刺身だ。コイの刺身にも似たやや硬くシコシコとした噛みごたえと、舌に残る独特の旨みとコイにはない甘み。このまま何も説明なしに食卓に出されたら、淡水魚→ナマズという正解に辿りつくひとがどれくらいいるだろう。

    イワトコナマズの蒲焼。あっさりとして白身魚本来の味。

    つぎに蒲焼。ふだん慣れた養殖のウナギに比べれば脂分がずいぶんと少ないが、あっさりとして白身魚本来の味が楽しめる。

    湖岸の伝統料理「じゅんじゅん」が最高!

    イワトコナマズの「じゅんじゅん」。熱々のところをいただく。

    それから、イワトコナマズの「じゅんじゅん」である。「じゅんじゅん」とは滋賀県で牛肉や鶏肉、魚などをすき焼き風に味付けした鍋料理である。

    なかでも湖魚の「じゅんじゅん」は、主に湖北や湖西、湖東、沖島などの湖辺を中心に食されている郷土料理だ。「じゅんじゅん」という名称は、具材を鍋で煮る際に出る音が「じゅんじゅん」と聞こえたことに由来するとされている。

    標準的な料理名でいうと「沖すき」であろう。恩師筋の川那部浩哉氏によると、イワトコナマズの「沖すき」に勝るものは、まずあるまいとのこと。川那部氏によると、イワトコナマズさえ手に入りさえすれば、「沖すき」は自宅でもやれる。

    ただし、鍋に入れた材料はすべてその日のうちに食べ尽くすことが大切。熱いうちは全く感じさせない脂が、一旦冷めるとまさに奇妙な状態になるからだそう。

    ひとり鍋で提供されたイワトコナマズの「じゅんじゅん」は、近江の野菜とともに甘辛い醤油、みりん、酒などで味つけされており、寒い年末の晩、最高のご馳走であった。

    ※特に記載のない写真は湯本貴和さんの撮影です。

    協力/滋賀県立琵琶湖博物館 https://www.biwahaku.jp

    湯本貴和さん

    1959年徳島県生まれ。日本モンキーセンター所長。京都大学名誉教授。理学博士。植物生態学を基礎に植物と動物の関係性を綿密に調査。アフリカ、東南アジア、南米の熱帯雨林を中心に探検調査は数知れず。総合地球環境学研究所教授、京都大学霊長類研究所教授・所長を務める。京大退官後も旅を続け、調査を続け、食への飽くなき追求を続けている。著書に『熱帯雨林』(岩波新書)、編著に『食卓から地球環境がみえる〜食と農の持続可能性』(昭和堂)などがある。日本初の“食と環境”を考える教育機関「日本フードスタディーズカレッジ 」の学長も務める。

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