様々な種類があるボルネオのトロピカルフルーツ。中級編はランバイとランサーだ! - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.04.10

    様々な種類があるボルネオのトロピカルフルーツ。中級編はランバイとランサーだ!

    様々な種類があるボルネオのトロピカルフルーツ。中級編はランバイとランサーだ!
    しっかりとした果皮に包まれ、そのなかには種子離れの悪い甘い果肉。これがトロピカルフルーツの特徴だ。植物の多様性が極めて高いボルネオは、固有種が多く、同じ仲間でも複数の野生種がある。

    ランバイはマンゴスチンの仲間、ランサーはランブータンの仲間、さらにマンゴーは10種類前後!同じ仲間の食べ比べは、この地の果実食の中級編。ジャックフルーツは、おこわにしてもうまいぞ!

    熱帯の果実の甘さと種子離れの悪さの理由とは?

    ボルネオ2-1

    熱帯果実の数々。手前からランブータン(Nephelium lappaceum)、テラップ(Arthocarpus odoratissimus)、バンバンガン(Mangifera pajang)。テラップとバンバンガンはボルネオ島の固有種。女性の手元にマンゴスチン(Garcinia mangostana)がみえる。マレーシア・サバ州コタキナバルにて。

    しっかりとした果皮に包まれていて、そのなかに種子離れの悪い甘い果肉が入っているのが、典型的なトロピカルフルーツである。この特徴は、人間を含むサルの仲間である霊長類に種子を散布させるのに適している。

    丈夫な果皮は齧ると苦いものも多く、しばしば殻のように厚いが、これは甘い果肉をアリやミバエなどの昆虫から守るだけではなく、種子を丸呑みせず、果肉だけを食べるリスや小鳥のような種子を運ばない果実食者を寄せつけない工夫ではないかと考えている。

    他の動物から果肉を守り、手先の器用な霊長類だけが果皮を上手に剥いて、おいしい果肉にありつける構造なのだ。

    熱帯では複数の系統を持った多様な植物が、このような霊長類に種子散布を依存した果実を持っている。先に述べたマンゴスチン(Garcinia mangostana)はキントラノオ目フクギ科、ランブータン(Nephelium lappaceum)はムクロジ目ムクロジ科に属している。

    似たような果実は、キントラノオ目コミカンソウ科のランバイ(Baccaurea motleyana)の仲間、ムクロジ目センダン科のランサーあるいはドゥク(Lansium domesticum)などが挙げられる。

    ボルネオ2-2

    熱帯果実の数々。中央から左を占めるのは、ランサーあるいはドゥク(Lansium domesticum)、右のランブータンに似ているが、毛がイボ状なのはプラサン(Nephelium ramboutan-ake)。マレーシア・サバ州シピタンにて。

    トロピカルフルーツの中級編は野生種の食べ比べ

    中国南部の原産ではあるが、楊貴妃が好んだというので有名なムクロジ科のレイシあるいはライチ(Litchi chinensis)もそのひとつだ。このようにさまざまな果実を識別して少しずつ異なる味わいを楽しむのが、トロピカルフルーツの中級編といえる。

    ボルネオ島は、植物の多様性が極めて高く、トロピカルフルーツでも固有種が多い。とくに同じ仲間でも複数の野生種があることが大きな特徴だ。

    野生のマンゴーではバンバンガン(Mangifera pajang)など10種前後、ランバイの仲間も7種前後と多くの種が知られている。

    ボルネオ2-3

    ボルネオ島固有のランバイの仲間(Baccaurea angulata)。マレーシア・サラワク州クチンにて。

    ジャックフルーツの種子は餅米と炊く!

    完熟果実をフルーツとして生食するものや、未熟果実を野菜や漬物、酸味料として使うものなどさまざまである。もっと大型の果実にはジャックフルーツ(Arthocarpus heterophyllus)の仲間がある。

    ジャックフルーツはインド原産とされ、世界で一番大きなフルーツとして知られており、重さ4050kgにも達する。野生のジャックフルーツはそれほど大きくはならないが、テラップ(A. odoratissimus)やチュンパダ(A.integer)など10種以上がボルネオ島の低地熱帯雨林に自生しており、半栽培下にあるものも多い。

    ボルネオ2-5,jpg

    野生ジャックフルーツの仲間チュンパダ(A.integer)。マレーシア・サラワク州ランビルにて。

    ボルネオ2-6

    複合果であるチュンパダを割ってみたところ。マレーシア・サラワク州クチンにて。

    これらは完熟した果実をフルーツとして食べるだけではなく、未熟な果実を野菜として煮物などに使ったり、完熟した種子を取り出して餅米にまぜておこわに炊いたりする。ジャックフルーツの種子が入ったご飯は、ちょうど栗ご飯のようで種子がホクホクしてたいへんおいしい。

    ジャックフルーツの仲間は、分厚い果皮のなかに複数の果実、つまり種子とそれを包む多汁質の果肉が包まれた構造になっている。これは複合果と定義され、複数の花に由来する複数の果実が集まってひとまとまりになっているものである。

    熟した果実の甘ったるい匂いは霊長類の好み

    複合果の身近な例としては、パイナップルやイチジクなどがある。大きな果実になるものは、温帯の果物のように枝先につくのではなく、幹から直接生えている幹生果になっていることが多い。枝先では果実の重量に耐えられないからである。

    ボルネオ2-7

    幹から直接生えているチュンパダの果実。マレーシア・サラワク州ランビルにて。

    これらジャックフルーツの複合果の果皮を破るには力が必要で、人間は鉈などの刃物を使うし、オランウータンも歯を使わないと中身にありつけない。少しドリアンに似た独特の甘ったるい匂いがして、多汁質の果肉を食べる。もちろん、この匂いもサルの仲間の霊長類を惹きつけるもので、人間以外でもオランウータンが大好物である。

    湯本貴和さん

    1959年徳島県生まれ。日本モンキーセンター所長。京都大学名誉教授。理学博士。植物生態学を基礎に植物と動物の関係性を綿密に調査。アフリカ、東南アジア、南米の熱帯雨林を中心に探検調査は数知れず。総合地球環境学研究所教授、京都大学霊長類研究所教授・所長を務める。京大退官後も旅を続け、調査を続け、食への飽くなき追求を続けている。著書に『熱帯雨林』(岩波新書)、編著に『食卓から地球環境がみえる〜食と農の持続可能性』(昭和堂)などがある。日本初の“食と環境”を考える教育機関「日本フードスタディーズカレッジ 」の学長も務める。

    特に表記のない写真はすべて湯本貴和さんの撮影

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